共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

2007年から仕事と育児の両立支援に取り組んできたANAは、女性活躍推進をはじめとするダイバーシティ&インクルージョンの先進企業です。全従業員の約6割を女性が占め、客室乗務員の4人に1人が子どもを育てながら働くママ社員なのだそう。

 

長く働き続けられる秘訣は、多彩な働き方を選択できる環境にあります。今回、D&I推進部で2人の子どもを育てるママ社員の和知恵美さんと、男性育休促進や仕事と介護の両立等を担当されている百々正江さんにお話を伺いました。

 

百々正江さん(右)/ANA福岡空港支店旅客課でキャリアをスタートし、ロイヤリティマーケティング部、ANAテレマート営業サポート室などを経て、今年4月より現職。D&I推進の基盤づくりや、男性育児、介護の両立支援などに携わる。和知恵美さん(左)/東京空港支店旅客部国内線旅客でキャリアをスタート、ANAエアポートサービス出向国際線旅客、人事部(ダイバーシティ&インクルージョン推進室)を経て、今年4月より現職。育児・介護の両立支援やD&Iに関わるワークショップ企画運営、LGBTフレンドリー推進などに携わる。

 

バリエーション豊富な短時間勤務制度で様々な立場の社員をフォロー

——御社では、育児と仕事の両立支援が充実し、ママ社員が長く働き続けられる環境を整備されています。通常6時間の短時間勤務も、3つのパターンから選べるそうですね。

 

和知さん:

はい。育児のための短時間勤務制度では、1日あたりの勤務時間を5時間、6時間、7時間の3パターンから選ぶことができます。私は今、復職して2年目で、5歳と3歳の子育て中なのですが、当初から短時間勤務制度で一番ミニマムな5時間勤務で働いています。最初は、休憩なしの5時間にしていたのですが、最近1時間の休憩をつけて合計6時間に変更しました。今後は、家庭の状況などのバランスを見ながら、6時間勤務、7時間勤務といった形で徐々にフルタイムに近づけていくつもりです。この短時間勤務は、子どもを持つママ社員だけでなく、男性や介護の方も適用できます。

 

 

——育休から復職した後、両立のペースがなかなかつかめず悩んだり、挫折してしまうママも少なくありません。状況を見ながら慣れてきたら段階的にフルタイムに戻していくことができるのは助かる場面が多いでしょうね。

 

和知さん:

私自身、復職直後はどのような生活になるのかわからず不安が大きかったんです。そこで、最初は5時間勤務からスタートし、状況に応じて可能そうなら勤務時間を延ばそうと考えていました。現在は10時に勤務を開始し、16時まで働いてから子どものお迎えに行きます。毎日出勤していた時は、通勤に1時間ほどかかっていたのですが、多少電車が遅延しても間に合うので気持ちに余裕が持てます。家庭と仕事のバランスもとりやすいので、今の働き方にはとても満足していますね。

 

1人目の育休明けは空港内の国際線旅客係員として復職したのですが、通常通りの勤務だと夜遅いときは終業が22時になってしまうのがネックで。当時、夫が残業の多い部署で子どものお迎えができない状況だったため、早めに上がれる短時間勤務を選択しました。

 

ただ、シフト勤務で働く社員の場合は、短時間勤務ではなく、1日の労働時間は通常通りで年間の勤務日数を減らす「短日数勤務」という制度を選ぶケースも多いです。

 

年間の勤務日数だけが決まっている「短日数勤務」はシフト勤務者に人気

——1日の勤務時間ではなく、年間の勤務日数を自分で選べるのですか?

 

百々さん:

この制度は、客室乗務員とシフト勤務で働く地上職を対象にしたもので、子どもが小学校3年生終了時まで、1年単位で年間の公休数を選択することができます。

 

たとえば、客室乗務員の場合、勤務日数が通常の5割、7割、8割などから選択でき、月によって変動はあるものの、月間の勤務日数はそれぞれ10日、14日、16日などが基本になります。繁忙期は忙しいため必然的に勤務日が増えますが、その代わり他の月に休みが振り分けられるんです。要するに、年間365日から公休日をひいた数が出勤日数になり、会社からの割り当てによって決められた勤務日に仕事に行くという仕組みになります。

 

 

——子どもの成長や家庭のサポート環境など、家庭の事情に応じて、働き方をフレキシブルに変えていけるのですね。

 

百々さん:

ワークライフバランスに合わせて、年度ごとにお休みの割合を変えて働くことができるので、復職する人にとっては有力な選択肢のひとつになっていると思います。この制度はママだけでなく、男性社員も取得できるんですよ。

 

夫婦ともシフト勤務の方は、短日数勤務を選ぶケースが多いようですね。たとえば、私たちの上司は次のように話していました。

 

私の妻もANAでこの制度を使って仕事をしています。通常であれば、現場は基本的に4勤2休の繰り返しなのですが、今は5割を選択しているので、パターンは決まっていないものの、出勤と休みのバランスが半々になっています。うちは子どもが2人いて学校行事もありますので、平日でも夫婦で調整することで行事にも参加しやすいというメリットがありますね。

 

和知さん:

1日を長く働いて休みを多くとる方がいいのか、あるいは、1日短時間でバランスをとる方がいいのかは、家庭の事情によって選択してもらえればと思います。ほかにも、客室乗務員限定ですが、配偶者が転勤して帯同する場合、自分のベースとなる所属基地を変更(東京、大阪の2か所)して働き続けることができる制度も整えています。その人らしく働きつつ、プライベートも充実させられるように、本人が働き方をカスタマイズできるのが魅力と言えるのではないかと思います。

 

 

業務内容が多岐に渡るからこそ、働き方に関わる制度にも細やかな配慮がなされていることが伺えます。次回は、今多くの企業で課題となっている介護施策について詳しくお聞きします。

 

取材・文/西尾英子