高齢者のプライド、適宜折るべし

「パソコンは何もおかしくないです!正しく使えばちゃんと言うことを聞いてくれます!ここにコピー&ペーストの方法を書いて貼っておきます!!!!!」

 

ついぞ怒りをあらわにすることがなかった息子の嫁の、思いがけない剣幕に義父は驚いたようでした。

 

会社での上司と同じように、「わからないのも当たり前ですよね~機械ってほんとに使う人に優しくないですからね~」という物腰で接し続けていれば、本人のためにもならないし、何よりも、サポート役である家族の精神力が削られていく一方です。

 

それからというもの、義父が何かわからないことを聞くときは、しばらく自分で悩んでから「悪いけど、ちょっと教えてくれない?前にも聞いたかもしれないけど」とおずおずと尋ねてくれるようになりました。

 

そう聞いてくれれば、私だって心穏やかに対応することができます。

 

さらに最近では、スマホの操作方法を私ではなく子ども達に聞く様子も見られるようになりました。私自身、そのうち義父母と同じ立場で、自分の子どもや孫に電子機器の使い方を教えてもらう日が来るに違いありません。

 

そんなときも、いくら目上だからって、理不尽に偉そうな態度をとることは家庭内では決して許されないと肝に銘じておこうと思います。

 

その不文律を確立することが、結果的に高齢者への尊敬を保ち、家族みんなが気持ちよく過ごせることにつながると私は信じています。

 

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文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ