「子連れ出勤」という考え方は、日本的な発想
──海外では、女性が産後すぐに働いて子育ては外注する国も多いです。ジョブチェンジなどの雇用が流動的で女性が働きやすい反面、日本のような産育休制度は整っていないとも聞きます。
光畑さん:
どちらにもそれぞれのメリット、デメリットがありますよね。実は、子連れ出勤は海外からの取材や視察も多いです。メディアで言うと、アメリカの「CNN」、カナダの最有力紙「THE GLOBE AND MAIL」、イギリスの「marie claire UK」、韓国のTV局、ドイツ…アメリカ政府、ウズベキスタン、キルギスから視察に来られたこともあります。
──そんなに多くの反響が!子連れ出勤は日本でもまだ珍しいですが、海外からも注目されているんですね。
光畑さん:
子連れ出勤は日本ならではのスタイルのようで、みんなの興味を惹くトピックです。家族で「川の字」で寝る日本の文化と重なる部分があるのかもしれません。バリバリ働いているけれど子どもとの時間がたまにしか取れないことを疑問に感じている海外の方から、「(子連れ出勤できるなんて)羨ましい」とお声をいただくこともあります。
──海外ではナニーやベビーシッターも主流ですが、本当は子どもと一緒にいたいと考える方もいらっしゃるんですね。
光畑さん:
日本でも「育休は〇年とるのがいい」「育休を取りすぎるとよくない」というような議論がされますが、長期間の休みより柔軟な働き方を望む人もいるのではないでしょうか。小さくてかわいいときに離れることに寂しさを感じる人もいますし、本当は制度で一律に縛るのではなく、フレキシブルに個人で働き方を選べるのが理想だと思います。
私が代表理事を務める
NPO法人子連れスタイル推進協会でも、企業や行政にもこうしたことについて広く知ってもらうための活動に取り組んでいます。弊社では東京、地方、SCなどさまざまな場所での子連れ出勤経験があるので、そこから感じたことをセミナーや講演、見学会などでお伝えしています。
──育児当事者だけでなく、行政や企業が変われば社会も大きく変わりそうですね。
光畑さん:
今、私は大学院で「子連れ出勤の有効性」について研究しています。関連記事はたくさん出てくるのですが、効果をまとめた論文や学術研究はまだ乏しいのです。国際会議でも反響は大きいですし、数値やデータで研究結果を示せれば、企業側の子連れ出勤に対しての見方ももっと変わってくるのではないかと感じているんです。まだまだ根本的には、子育てしながら働くことに関して世の中は変わっていません。でもこうした働き方の選択肢があることを知ってもらえればと思いながら活動しています。
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日本独自のワークスタイルとして、海外からも注目されている「子連れ出勤」。企業で適切なルール作りや体制ができれば、貴重な人材を失うこともないので人手不足の解消にもつながります。企業内保育所やベビーシッターに次ぐ「新しい選択肢」として考える企業が今後は増えていくのか、注目です。
取材・文/秋元沙織