自分のキャリアは、自らの意思で選択する。自発性に富んだ人事制度

——先回りの仕組み作りだけでなく、現場の声から制度を整えることも大切ということですね。店舗から本社に異動することもあるのですか?

 

下青木さん:

スターバックスでは、第一線のお店を「サポートする」という意味で、本社機能を持つオフィスを「サポートセンター」と呼んでいます。

 

新卒で入社された方は、まずは店舗勤務から経験しますが、年に2回ほど社内採用(公募制度)の機会が設けられており、希望を出して採用試験に通れば、店舗勤務からサポートセンター勤務に異動することができます。

 

——会社側から辞令を待つのではなく、自らが考えて行動につなげる、自発的な人事ですね。

 

下青木さん:

「やりたい」と思うことができたら、それに向けて意識を高めていくことが必要なのかなと思います。私も希望を出してサポートセンターに異動してきたのですが、機会を提示されたとき、それを掴みにいく準備をしているかどうかを試されているようにも感じました。

 

サポートセンターでのオフィス業務が向いているのか、店舗での接客業務が向いているのかは、やってみないとわからない部分でもあるので、「社内インターンシップ制度」を利用して、1年半から2年、異動先の部署で実際に働いてみて、自分に合っているかどうか体験をすることも可能です。

 

店舗とサポートセンター間での社内インターンシップや社内採用の制度は日本独自の仕組みですが、店舗勤務で培った顧客目線で仕事をすることは、会社の仕組みや体制づくりに役立てられると考えていますし、サポートセンターで得られるグローバルな視点や経験もあります。店舗とサポートセンターの両方を経験した人たちが、リーダーになっていけば「ユニークで強い会社」に成長していけるのではないでしょうか。

 

アルバイトも社員同様に受けられる育児サポートの制度

 ——アルバイトも育休・産休が取得でき、さらに保育園費用の補助も正社員と同様に受けられるそうですね。

 

下青木さん:

スターバックス店舗で働くパートナーの8割がアルバイトです。私たちが支援するべき対象は、必ずしも正社員だけでなく、店舗で主力として働いているアルバイトの方たちに対しても、できる限りの支援をしていくことに重きを置いています。

 

そのため、保育施設の補助などの育児支援の施策も、社員とアルバイト分け隔てなく利用することができますし、制度内容においても正社員とアルバイトで大きな差はありません。アルバイトの方にも「長く働いていただきたい」という思いと、出産というライフイベントでキャリアが途切れないように、子育てが落ち着いたタイミングで安心して戻ってきていただきたいという気持ちがあります。

 

また、当社では新卒採用、中途採用の他にも、アルバイトの正社員登用の機会が年に数回ほどあり、試験をパスした方は正社員になることができます。正社員登用を希望される方の年齢もさまざまで、第二新卒くらいの方もいれば、子育てがひと段落した50代の方もいます。「正社員でもう一度チャレンジしたい」と考えた時に今までやっていた仕事の延長線上でキャリアが積めるということは大きなメリットになるのではないでしょうか。

 

  

多様なライフステージの方を受け止められるような制度作りに力を入れているスターバックス。数年先を予見した先回りの制度整備や、自分の意思で選択できるキャリア制度が、一人一人の「自分らしさ」を発揮しながら、仕事を楽しめる職場環境につながっています。

 

取材・文/佐藤有香