ただ居心地がいいだけじゃない、従業員には相応の成長が求められる
——誰もが業務を兼務していると、給与はどのように評価しているのでしょうか?
近藤会長:
弊社の人事制度は、生涯雇用だけれど年功序列ではなく、完全な実力主義です。英語力、PC/IT能力、対人能力を社員の基礎力として評価し、給与の増減を決めています。
例えば英語力では、TOEICの点数ごとに手当を支給します。900点あると年間で30万円。制度開始から900点を取り続けている女性課長は、定年までに合計900万になる計算です。車1台買えますね(笑)。でも、試験を受けなかったらランクは下がります。
—— TOEICについては、500点以上が正社員の条件ということですが、英語に関係ない業務で正社員になりたい場合はどうするのでしょうか?
近藤会長:
TOEIC受けたこと、ありますか?あれは英語力だけではなく、集中力、持続力、情報処理能力、判断力、タイムマネジメント能力、などの総合的な力が必要なテストなんです。総務や経理の仕事にも生きるので、そういう意味で、英語に関係がない業務でも、弊社規定ではTOEIC 500点は義務なんです。
——TOEIC500点ないと入社はできない?
近藤会長:
いえ、そうとは限りません。新卒採用で、TOEIC500点取得していない学生に内定を出したこともあります。入社までに取るように言ったのですが、彼は取らずに入社したので、嘱託雇用でした。その間、給料は一切上がらないし、退職金の根拠にもなりませんよ。内定から丸2年かけてやっと正社員になったんですよね。
——厳しいですね。それでも本人は辞めたいとは思わないんですね。
近藤会長:
ちゃんと説明していますし、本人も自分の責任とわかっていますからね。
雇用を守るには、儲けなければいけないし、会社が成長していくためには、社員のレベルが上がるということが前提です。
会社が雇用を守って人を大事にするという精神的な居心地の良さと、ハードな実力主義がミックスになっている。でも、みんな納得しています。
社員の成長支援と評価と待遇、全部セットで考えないと。雇用政策というのは総合的なものなんですよね。
… 社員のエピソードを話すとき、全員の名前と状況、TOEICの点数を記憶されていることから、真に一人一人に向き合う経営をされていると伝わってきました。
利他の精神が浸透し、働きやすく居心地の良い会社だけれど、自分が貢献した分だけ評価されるという面は厳しいものもあります。 「雇用を守るために社員の成長は不可欠。けれどその前に社長が成長することが大切」という言葉が印象的でした。
PROFILE 近藤宣之さん
取材・文/早川奈緒子