昨日の自分は今日の敵。学習時間記録法でやる気を維持

当時の学習記録には、あきさんの歴史がつまっている

——英語に携わる仕事の第一歩は、通信講座の添削指導員でしたが、本気で英語を勉強し始めてから、5年ほどかかっています。この5年間はずっと英語の勉強をしていたんでしょうか?

 

あきさん:

そうですね、産休が明けてからは英語とは関係のない仕事を在宅でしていましたが、毎日5時間近くは勉強していたと思います。

 

——5時間を5年間⁉︎その間モチベーションはどうやって維持していたんでしょうか?

 

あきさん:

もともとコツコツ勉強をするのが苦にならないタイプではありますが、勉強した時間を毎日記録していたのが、モチベーションにつながっていたと思います。

 

「TOEICTEST英語学習ダイアリー」(現在は廃盤)という手帳に、勉強した時間をL/S(Listening/Speaking)とR/W(Reading/Writing)に分けて5分単位で記録し、1日の終わりに合計学習時間も記入していました。

 

「昨日より1分でも長い時間を手帳に書きたい!」という気持ちで昨日の自分と今日の自分を競わせることが、日々のモチベーションになっていました。あとは、「英語を勉強している間は仕事でキャリアを求めない」と決めていたことも学習効率アップにつながったと思います。

 

——キャリアのために英語を勉強する人が多いと思うのですが、逆にキャリアを求めないというのはどういうことなのでしょうか?

 

あきさん:

「二兎を追うものは一兎も得ず」ということわざがありますが、私はそうは思いません。ただ二兎までは追えても三兎は無理だと思うんです。働くママの場合、やっぱり一番は子どもの存在。子どもとの時間や心に占めているスペースを減らすことはできません。

 

となると二匹目の兎は仕事か英語学習かを選ばなければいけません。私は、英語を勉強している間、仕事は最低限の責任である「納期と質」だけはきちんと守り、あとはあまり頑張りすぎないようにしていました。

 

仕事のキャリアはひとまず横に置いておき、なるべく仕事は定時で終わらせ勉強する時間を作る。本気で勉強したいなら、そうした潔さも必要ではないかと思います。

 

——そうしてついに英語に関わる仕事に転職されるわけですね。高校講座の英語添削指導員から、英会話学校講師、米軍基地内事務、社内通翻訳者、とより専門性の高い職種にキャリアアップされてきて、今の目標はフリーランスの通訳者になること。最初からこうしたビジョンがあったんですか?

 

あきさん:

ビジョンなんて全然なくて、通訳者をしている自分なんて数年前まで想像もしていませんでした。ただ、それぞれの場所で必要とされる英語のスキルに磨きをかけていると、次に進むべき道が自然と見えてくるんです。そうしてステップアップを続けて今があります。

 

ひとつ言えるのは、英検1級とTOEIC900点を取ったことで、道が開けたということ。この下積み期間とも言える長い時間があったからこそ今があります。

 

すぐに必要なわけでもないスキルを身につけるために何年も勉強し続けるのは大変なことですが、そこで諦めなければ「女は英語でよみがえる」ことができるということを、一人でも多くの方にお伝えできたらなと思っています。

 

・・・

自分の道を切り開くのは自分次第。学び直すのは何歳からでも遅くはないということを身をもって教えてくれたあきさん。次回は、英語の学び直し実践編。育児をしながらの英語を勉強するコツを伝授してもらいます!

 

PROFILE  あきさん

通翻訳者で20歳と17歳のお子さんを持つ二児の母。子育て中に英語の学び直しをはじめ、TOEIC405点から、自宅学習を中心とした勉強法でフルスコアとなる990点を取得。英語添削指導員、英会話学校教師などを経て、現在は社内通翻訳者として勤務する傍ら、フリーランス通訳者として各種イベント、国際会議などで活躍中。


文/上野真依 撮影/河内彩