共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。
妊娠や育児についての無料電話相談サービス「エンゼル110番」など、ママに優しいイメージがある森永乳業。それは働く社員に対しても同様です。育児支援を中心にたくさんの制度を用意しており、利用率も年々増えています。多岐にわたる制度をどうやって社員に周知し、活用してもらっているのか、制度策定などに携わる川口佐和子さんにお話を伺いました。
PROFILE 川口佐和子さん
全事業所説明会を開催して会社の「本気度」を社員に周知
──森永乳業は働き方や育児支援に関する社内制度が充実していますが、今日までの簡単な経緯について教えてください。
川口さん:
2005年に施行された次世代育成支援対策推進法を機に、育児支援制度について社内で本格的に取り組み始めました。07年に立ち上げた「次世代育成委員会」ではママ社員のヒアリングを行い、「育児を理由とした短時間勤務」などの制度が生まれました。中でも「学校行事休暇」は子育て社員目線の制度で、積立年次休暇*を、入学式、卒業式、運動会、文化祭、授業参観という子どもの学校行事に充てることができます。これ以降も、08年に男性育児休業の一部を有給化、13年に看護休暇の有給化、15年に有給の配偶者出産休暇を新設するなど、育児支援制度を拡充させてきました。
また17年には、これまで「育児支援制度」としていたものを、「ダイバーシティ&インクルージョン」という考え方に包括しました。優先施策として「育児社員の活躍支援」「介護社員の活躍支援」「ワークスタイル変革」「職場環境の醸成(特にマネジメント職の意識変革)」という4つの大きな取り組みに整理しました。
*積立年次休暇…期限内に取得できなかった有給。
──それぞれの分野で、具体的にはどんな取り組みをしてきたのでしょうか?
川口さん:
「育児・介護社員の活躍支援」では、主に対象社員が利用できる制度やセミナーを新設し、制度の周知を積極的に行いました。「ワークスタイル変革」では、働く場所と時間の選択肢を広げ生産性を上げるための制度を新設しました。「職場環境の醸成」では、誰もが働きやすい職場環境を作るためにマネジメント層へのアプローチを行っています。
──本当に多くの取り組みをされているんですね。でも、こんなに制度が多いと社員のみなさんに周知するのが大変なのではないでしょうか?他の企業では制度を作ったり宣言をしたものの、その後うまく運用できなかったという話も聞きます。
川口さん:
まさにその通りで、どんなに制度を作ったり働き方に関する文化を変えようとしても、社員が目的を理解し共感できなければ意味はありません。そこで当社では社内に目的や考え方の理解を促すため、2018年7~10月にかけてダイバーシティ&インクルージョン説明会を全23事業所で開催しました。約2200人の社員に向けて「これから会社はダイバーシティに本気で力を入れていきます」と延べ35回説明したのです。
──35回も!しかも、全事業所でですか!本気度が見えてきますね…。
川口さん:
本社だけではなく、支店や研究所、工場でも行いました。説明会では「森永乳業の目指すダイバーシティ&インクルージョン」の説明だけではなく、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)についてのワークも行いました。「会社として今後こういう取り組みを行っていくんだな」という共通認識が社内に生まれましたが、この頃は概念的な話も多かったので、当時はまだよく分からない社員も多かったと思います。