5か月間の準備期間を経て…
取りこぼしなく「完全取得」に至るまで
——イクメン休業を導入されて、5カ月後には取得対象者全員が1カ月の育児休業を完全取得できているそうですね。
森本さん:
2018年9月に制度を導入して最初の5カ月間、2019年1月までは「準備期間」とし、その期間で取得期限を迎える人には「できる範囲で休みを取得するように」と働きかけました。導入直後で「1か月休みましょう」とは、引き継ぎなどを考えるとさすがに現実的ではないですからね。2019年2月以降は、取得期限を迎える社員全員が1か月の育児休業を一括、もしくは分割で完全取得をし、取得率100%を達成できています。
——お子さんの「3歳の誕生日まで」に1か月以上の休業を取得するというイクメン休業ですが、対象人数も多い中で取得対象者の現状把握と、未取得者への働きかけはどのように管理していたのでしょうか?
森本さん:
対象者人数が多いので人の目でチェックするには限界があり、システム化することで取りこぼしなく、現状の確認と未取得者への働き方ができるようになりました。
取得対象者が忙しさに追われて「気づいたら期間が過ぎていた」ということのないよう、お子さんの2歳の誕生日が過ぎても「『イクメン休業』取得計画書」をシステムに登録していない社員には、パソコンにポップアップでメッセージが出るように設定。
さらに総務担当者が「どの社員が計画書未提出か、取得期限はいつまでか」などを随時確認できるようなシステムも整備しました。2019年2月以降、毎月「取得期限を迎える社員」の人数と、取得の有無を調べていますが、今年の8月末まで、670人の対象者全員が取得を完了しています。
——当初、イクメン休業について否定的な声も見られたとのことですが、取得した社員からの感想はいかがですか?
森本さん:
休業取得を完了した社員とその配偶者それぞれに、アンケートを行っているのですが、総合評価は9割以上が「よかった」と言う評価になっています。「妻の苦労を今までわかっていなかった」「しんどい時に、夫が側にいることで安心感を得られた」「夫から『これまでごめんね』と言われて、思わず涙が出た」など。
やはり暗黙のうちに役割分担ができていて、気づけば配偶者側の負担が多くなっていたという家庭も多く、イクメン休業がそのことに気づくきっかけになったという声も。休業取得後も、家事と育児をうまく分担していけるよう、夫婦間で話し合っている人が多いです。週の半分は早く帰って保育園のお迎えやお風呂を入れるようにしていると言う人もいるようです。休業中だけでなく、継続的に家事と育児に協力している姿勢が伺えるようになったのは嬉しい変化ですね。
また、今年の6月には、パパ育児の秘訣やママの気持ち、ママへのNGアクションなどをまとめた「イクメンガイドブック」を作成しました。先輩パパたちの育児や家事の失敗例、成功例もまとめていますので、有意義なイクメン休業のために活用してもらえたらと思います。
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社員の業務面、給与面での不安も考慮した充実の制度内容と、システムを活用することで取りこぼしなく、制度の完全取得を実現した積水ハウス。分割での取得を可能とした柔軟性や、家族ミーティングシートの配布などの活用書類の準備など、「男性も育休を取得するのが当たり前」と言う流れを会社側が整えたことが100%取得を後押ししたのでしょう。
取材・文/佐藤有香