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今回は、スウェーデンでの男性の長期間の育児休業にならって、男性社員の1か月以上の育児休業制度「イクメン休業」を導入した積水ハウスの取り組みを取材しました。社長のスウェーデン訪問から4か月後に制度運用を開始させ、さらにその5か月後には社内対象者の取得率100%を実現。

 

制度の導入と運用に携わったダイバーシティ推進部の森本泰弘さんに、社員の意識改革や、完全取得に至った背景について伺いました。

 

PROFILE:森本泰弘さん

積水ハウス株式会社ダイバーシティ推進部所属し、制度の導入と運用に携わる。

 

「平均2日」の男性育休を「1か月以上」に
社長のスウェーデン訪問がきっかけで「イクメン休業」を導入

——仲井社長のスウェーデン訪問が制度化のきっかけになったそうですね。

 

森本さん:

20185月、仲井が海外IRでスウェーデンのストックホルムに訪れた時、街のいたるところで育児をする男性の姿を見かけました。スウェーデンの政府関係者に「なぜこれほど男性が育児に参加できているのか」と聞いたところ、「国の政策でスウェーデンでは男性が育休を取得するための制度ができている。男性が3か月間の育休を取るのは当たり前だ」という回答に衝撃を受け、帰国後すぐにダイバーシティ推進部に話を持ちかけられました。

 

——それまでの積水ハウスでは、男性社員の育休取得平均日数は「2日間」とのことでしたが…。

 

森本さん:

お客さまに住まいを提供する立場として、「『わが家』を世界一幸せな場所にする」というグローバルビジョンを掲げていたのもあり、そのためには、まずは社員とその家族が幸せであること、そして働きがいと生きがいを社員自らが持ち、幸せを感じながら仕事ができるようにしなければいけないという思いがありました。

 

「イクメン休業」の制度化以前から、「男性社員も育休を取るように」と働きかけ、取得率は約95%と高い割合を維持していましたが、平均取得日数はわずか2日と、なかなか長期間の休業取得は難しく「名ばかり育休」の状況になっていたように思います。

 

同時に、「女性活躍」と言いつつ「男性の意識改革」が進まないことにも課題を抱えていました。男性の意識改革が進まないと、どうしても家事や育児の面で女性に負担がかかりがちに。その女性に対して「女性活躍を推進したい、頑張れ」と言ったところで、「もう十分に頑張っている」という返答が返ってくるのは当然のことです。

 

男性がまず変わらなければいけない。ダイバーシティの推進、働き方改革、家族の幸せにおいて、まず男性社員の意識改革から始めようということに。

 

仲井から「スウェーデン同様、3カ月の育休制度を導入することはできないか」と相談を受けて、社内でヒアリング・調整等をを行った結果、「1か月なら何とかいけそうだ」という意見にまとまりました。取締役会での審議も通り、「1か月以上の男性の育児休業」の制度化に向けて本格的に動き出すことになりました。

 

仲井社長とスウェーデン大使のインタビューからは、「イクメン休業」発案までの経緯が伺える

 

——仲井社長のスウェーデン視察が20185月、「イクメン休業」の新制度導入が同年9月と、わずか4か月で運用が始まったことにも驚きました。

 

森本さん:

そうですね。トップダウンの成功例だと思っています。今回の制度導入は、経営ビジョンとも合致しましたし、何より社長の熱い思いがあったのが、運用開始までの時期と、完全取得までの道のりに大きく影響したのだと思います。

 

——これまでの育休が「平均2日の取得」に対して、「1か月以上の取得」を推進されることへの反応はいかがでしたか?

 

森本さん:

これまでやったことのないことを始める場合、全員が肯定的な意見になるということは珍しく、否定的な意見も多少あったのは事実です。「1か月は長すぎる。3日で十分」という社員からの声や、「家事育児ともにスキルの低い夫が家にいると、余計な仕事が増える」という配偶者側からの声もあり…。

 

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