共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。
前回の記事「
育児中の社員に「一日最大2時間分の就業を免除」時代に合った働き方を追求し続けるアサヒビール」で紹介したアサヒビールの多彩な制度や取り組みに続き、社員の成長を応援する「スキルアップ休職制度」をご紹介します。
仕事を一定期間休職し、何らかの分野での学び直しをすることで、自身を磨く「リカレント教育」の概念は欧米では一般的ですが、日本ではそれを取り入れている企業は多くありません。
今回は、スキルアップ休職制度を利用して、海外留学を経験したデジタルマーケティング部の小河佳奈絵さんにお話を伺いました。
PLOFILE:小河佳奈絵さん
アサヒビール株式会社デジタルマーケティング部所属。2018年にスキルアップ休職を利用して語学留学を経験。
出向先からの異動のタイミングで1年間の休職を申請
——小河さんは、異動のタイミングで「スキルアップ休職」の制度を利用したそうですね。
小河さん:
2018年9月1日〜2019年8月31日の1年間、スキルアップ休職の制度を利用して、アイルランドとイギリスに留学しました。それまでは広告代理店に出向し、2年間勤務。任期が終了したタイミングで1年間の休職を申請しました。異動のタイミングだったので、業務の引き継ぎやバックアップなど、周囲への協力も最小限で抑えることができました。
——「語学を学びたい」と思ったきっかけは何だったんですか?
小河さん:
出向先では、アサヒビールのホームページの管理や運営などに携わっていました。一部英語ページもあるのですが、私のスキルでは、その更新業務をする際に簡単なミスにも気づけないような状態でした。
私はもともと英語に苦手意識を持っていて、英会話スクールに通ったりもしていましたが、なかなか思うような成果が得られず…。仕事で英語に携わる機会はそんなに多くはありませんが、今後のグローバル化に伴い、ますます語学力が必要になってくるだろうと、「いつかはしっかり語学を学びたい」という思いはずっと抱いていました。
——アサヒビールのスキルアップ休職では、必ずしも「業務に関わる資格やスキル」でなくてもOKと伺いました。
小河さん:
そうですね。「自身の知識を高めるため」という名目であれば、最大で2年間休職することができます。この休職制度ができたのも、それまでのアサヒビール社員が「社員が業務に追われて、自分のスキルアップに割ける時間がない」ということを課題として認識していたからだそうです。
スキルアップ休職の制度は2010年に導入され、現在までに13人の利用者がいますが、その大半が「配偶者の海外転勤の帯同」による引越しで日本を離れざるを得ない状況の社員だと聞いています。「海外滞在期間中に語学の勉強をしよう」と、赴任先の語学学校に通われる方が多いそうです。
私のように「純粋に語学を学びたい」と手を挙げる人はまだ少なく、申請するときはとても緊張しましたが、上司や当時業務で関わっていたアサヒビールのメンバーからも「一年後、帰りを待っているよ!」「自分の強みを作ってアサヒビールのパワーアップにつなげてほしい」と背中を押していただきました。
——実際に1年間、仕事を離れてみていかがでしたか?
小河さん:
最初の留学先のアイルランドでは、週5日、私立の語学学校に通い、空いている時間は現地のビール工場やウイスキー蒸留所に見学に行ったりしていました。帰国後に日本で活かせるものを得ようと積極的にビールやアルコールを取り扱う施設やお店に出かけていました。
——「アサヒビールの社員として行っている」という意識を強く持って臨まれたんですね。日本とアイルランドのビール文化に違いはありましたか?
小河さん:
まず感じたのは、「自分が思っていたよりも、自社の代表商品である『スーパードライ』の認知度がまだまだ低かった」ということでした。学校のクラスメイトやホームステイ先の家族に、自社商品の話をしてみても、「知っている」という回答が返ってくることはほぼなくて…。スーパードライは海外展開もしているので、もっと知られていると思っていたのですが、まだまだ浸透していないという事実を目の当たりに。
また、「海外のお酒のプロモーション方法を見てみよう」とお店やスーパーに行ったときも、日本ではよく見かける、クイズやプレゼントなどのキャンペーン企画は、アイルランドではほぼありません。アイルランドはパブ文化が根付いている国なので、「家でお酒を飲む」というよりも「パブでお酒を飲む」という習慣が一般的なのかもしれないですね。そもそもの販促方法が日本と違うのかもしれません。
もちろん好まれる味や香りの傾向も日本とは違い、アイルランドでは、黒ビールのようなガツンと強い味わいのものが好まれる傾向にありました。
アイルランドで8カ月学んだ後は、ビザの期限もあり、イギリスに移動して系列校の語学学校に3カ月通ったのですが、二カ国の文化の違いが見られたのも興味深い体験でした。