共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

オフィス家具や文具・事務用品等の製造・販売等を通して働きやすい環境をデザインするプラス株式会社。常に多様なニーズに応える製品・サービスを展開しているプラスには、社内にも多様化を実現する制度があります。

 

それが「退職者の再雇用」制度です。他社でのキャリアを積んできた人はもちろん、育児や配偶者の転勤などのやむを得ない理由で退職した人も再入社できるというユニークなこの制度について、人材開発室室長・白井さんに話を伺いました。

 

育児や介護でキャリアを諦めずに済む「退職者の再雇用」制度。「子育て支援手当」など子育て支援も充実

制度名称: 「退職者の再雇用」制度 導入開始日: 2018年9月より実施中 対象者:・ 3年以上在籍していた正社員、契約社員及び無期契約社員(日給月給制)で、以下の理由にて退職した者               ① 育児、介護、私傷病、配偶者転勤等のやむを得ない事情               ② 起業、進学、留学、転職等の自己都合     ・心身ともに健康であり、職務遂行において支障がないこと 今までに利用した人数:非公表

 

制度名称: 「子育て支援手当」 導入開始日: 2015年4月より実施中 対象者:学校教育法が定める義務教育期間内の子どもを育てる正社員・契約社員及び日給月給制の無期契約社員 今までに利用した人数:521人

 

プラス株式会社 コーポレート本部人事統括部

人材開発室 室長 白井由紀さん

2001年 プラス株式会社へ新卒入社。3年後、人材交流制度を利用し、コーポレート本部 人事統括部へ異動。新卒採用、新入社員研修の企画、運営や制度企画業務に従事。2020年より人材開発室室長に就任し、多様な人材が活躍できる職場づくりを追求している。

 

 

——プラスでは、退職者の再就職をサポートする制度があると聞きました。具体的にはどんな内容なのでしょうか。

 

白井さん(プラス):

「退職者の再雇用」制度は育児、介護、配偶者の転勤などの事情で退職した社員や、進学や起業などキャリアアップを目指して転職した社員が対象です。プラスを離れていた間に、培われた新しい視点・スキル・人脈・経験を活かし、再びプラスで活躍してもらうための制度です。退職する前までに3年以上在籍していることが前提条件となります。

 

——退職者に焦点を当てた制度は珍しいですね。この制度はどのようにして生まれたのでしょうか?

 

白井さん(プラス):

プラスは、多様な人材が活躍することで、企業としての競争力を高めていくことを目指しています。競争力の源である社員一人ひとりの仕事と生活が充実し、安心して長く働き続けることができる環境が大切です。そのために、まずは育児や介護を中心とした支援制度を整え、「在宅勤務制度」「退職者の再雇用」制度といった制度を制定するなど、ダイバーシティ推進に努めています。

 

社員の家族向けオフィス見学会「ファミリーデイ」より。オフィスを回遊するスタンプラリーや文具メーカーならではのワークショップなど盛りだくさんのメニューが人気。※2020年はコロナ禍の影響で休止。

 

退職者が新たなスキルと経験をもって再び仲間に。それがダイバーシティにつながる

——「退職者の再雇用」制度は、どのようにダイバーシティを実現しているのでしょうか。

 

白井さん(プラス):

一度退職した社員には他社で得た知識や経験、文化があります。これらを会社に取り入れていくことで多様性が広まると考えています。再雇用した社員は新しい価値の創造に大きく貢献してくれています。

 

実は、「退職者の再雇用」制度の制定以前より、プラスでは退職者が外部での経験を積んだ後に再入社し活躍するケースが多数ありました。そのため、再びプラスで働きたい人を受け入れる風土がすでにあったのです。制度化することによって、この風土を強化できたと思っています。

 

——外での経験を持った人とは、多様性を高めてくれる人材なのですね。具体的にはどんな社員が再入社されていますか。

 

白井さん(プラス):

たとえば、子育てや介護をしながら他社での経験を積んだ社員が戻ってきています。子どもが独立し、介護も落ち着いた時に「やっぱり、もう一度仕事がしたい」と再入社した社員もいて、「22年ぶりに戻ってきた私を、自然に受け入れてくれたことがありがたい」と感想を寄せてくれました。

 

——退職してから長い年月を経ても、戻れる場所があるのは社員にとってうれしいですね。キャリアのスキルを新たに身に付けた人だけではなく、育児や介護などでキャリアが途切れてしまった人も選考対象に含まれるのですね。

 

白井さん(プラス):

再入社してからも、「社風・どんな仕事をするか・働き方がすべてわかっている状態で仕事を始められるので、入社後のギャップが少なく、安心感がある」と言ってもらえています。これはスキルアップのために転職した社員も、育児・介護などのために退職した社員も同じです。

 

継続的なサポートから生まれる安心感を社員が実感。「子育て支援手当」

——プラスには子育て中の社員への制度もあると聞きました。こちらはどんな支援をされているのでしょうか?

 

白井さん(プラス):

はい。「子育て支援手当」といって、義務教育以下の子どもを育てる社員向けに子ども1人あたり毎月5000円を支援する制度です。ライフステージの中で最大の支出である出産と育児を、会社として支援しています。

 

子育て支援については、手当支給だけでなく「在宅勤務」や「時間単位有給休暇制度」などの制定も行いました。そのため、これまでは、たとえば子どもの学校行事のためには「有休」や「半休」を取得しなければならなかったのですが、「中抜け」も可能となりました。有給休暇を有効活用できるようになってありがたいという声も聞こえてきています。

 

男性社員も育児休職等を取得するなど、男女の区別なく仕事とプライベートの充実が図れてきていると感じています。

 

——保護者会や子どもの定期健診などは、1時間程度で済む用事もたくさんあります。中抜けできることで有給を取得しなくてもいいのはありがたいですね。「子育て支援手当」を受けている社員の声も聞かせてください。

 

白井さん(プラス):

「オムツ代がかかるので補助は助かった」「習い事や塾に出費がかさむので、毎月、継続的に手当てがいただけるのは安心できる」などの声が上がっています。

 

——毎月という継続的な支援が安心感につながるのですね。今後の課題としてはどんなことがありますか?

 

白井さん(プラス):

育児や介護、私傷病など事由を限定せず、プラスで働く社員全員が働きやすい環境整備を進めることです。多様な価値観を持った社員が能力を存分に発揮できる“ダイバーシティ&インクルージョン”な状態を積極的に創り出していきたいですね。

 

 

育児や介護などの事情からキャリアを離れた人、また自分の想いから一度退社をした人も再び活躍できる。すべての経験、スキルを活かせる——そんな環境づくりを制度化し、より復職しやすい文化を育てているプラス。多様な価値観、キャリアが生み出すサービスは、多くの人の「こうしたい」を叶えた環境を実現していくのでしょう。

 


【会社概要】

社名:プラス株式会社

従業員数:単体/1431名 連結/5510名

設立年月日:1948年2月16日

業種:製造業

事業内容:文具・事務用品、オフィス家具、オフィスインテリア用品等の製造・販売等

 

取材・文/川口香織(mugichocolate株式会社)