2020年6月下旬、2人の子供の手をつないで道を歩いていた妊娠中の女性に、「邪魔だ、どけろ」と言ったあげく、「目立ったから蹴りやすかった」をお腹を蹴った男性が逮捕される事件が起きました。

 

ニュースを見た妊娠中の女性や妊娠経験者の女性から「私もわざとぶつかられた」「妊婦は攻撃されやすい」と自身の被害を打ち明けるSNSなどの投稿が急増。

 

妊婦であることを周囲に知らせる「マタニティマーク」も攻撃の対象になりやすいという理由で、あえてつけないという人が多いことも明らかになりました。

 

今回は、マタニティマークの目的をもう一度見直してみたいと思います。

 

マタニティマーク、本来つけるべき理由とは

妊娠後期には大きくなったお腹から周囲にも妊婦さんであることが分かりますが、妊娠初期から中期まではあまりお腹が目立たないうえ、マタニティウェアも通常の服と見分けがつかないものも多く、パッと見て妊娠中とは分からないことがほとんど。

 

しかし、つわりや血圧・ホルモン変化などの激しい妊娠初期は、見た目では分からなくても特に体調がすぐれない時期でもあります。

 

万が一、街中や通勤電車で意識を失っても、マタニティマークがあれば「妊娠中である」ということを周囲の人にいち早く伝えられ、病院に運ばれた時も妊娠中であることをふまえた治療や投薬をしてもらえます。

 

また、電車で妊婦さんに席を譲ろうと思ったときに、もしも単にふくよかな体型だったら…と迷って結局声がかけられなかったという経験のある人もいるかもしれませんが、マタニティマークが見えていれば迷わずにすみます。

 

マタニティマークは「得するため?」

あるテレビ番組で、「マタニティマークをつけていて得したことはありますか?」という質問に対し、妊娠中の女性が「体調の悪いときに電車で席を譲っていただけて助かりました」と答えていました。

 

聞かれたからそのように答えたのだと思いますが、果たしてマタニティマークを「得する」ためにつけている人はいるのでしょうか?

 

多くの妊婦さんは日に日に動きづらくなる体でがんばっていますが、どうしても体調がついてこない時に赤ちゃんにもしものことがあってはと思い、マタニティマークをつけている人が大半。

 

「マークのおかげで座れてラッキー!」とは思っていないはずです。

 

「お腹の子は私の子であると同時に、天からの授かり物。いつか社会に送り出す1人の人間です。この子の命を責任持って守るためにも、マタニティマークが役立ってくれればと思っています」(Hさん・29歳・妊娠7ヶ月))

 

Hさんのように考えている妊婦さんは多いのではないでしょうか。

 

うざいと思われる・嫌がらせされる…つけない人も

いっぽう、「マタニティマークをつけていると逆に嫌がらせをされる」と聞き、あえてつけないという人も少なくありません。

 

関連記事:マタニティマークはいつから!?「つけづらい」と躊躇する妊婦が多い理由

 

『妊婦フレンズwithパパ』(株式会社ピジョン運営)のアンケート結果によると、マタニティマークをつけることに対し、3人に1人の妊婦さんが「不安に思っている」と回答。

 

理由の1位は「嫌な目にあうというニュース・情報をみた」からだということです。

 

実際に、SNSなどでは「迷惑そうに舌打ちされた」「妊婦だからって調子に乗るな、席は譲らないと言われた」「街中でわざとぶつかられて、よろけた」などの体験談は数え切れません。

 

安全な社会が急務!ただし…

仕事や人間関係がうまくいかない、経済的に困窮している…自分の苦しみを、弱い立場で反撃できないことを知っていて、「迷惑だから」と妊婦さんや子連れのママにぶつける。

 

世の中はそんな人ばかりでは決してないですが、残念ながらいまの日本には、そういう人も一定数存在しているようです。

 

筆者は添乗員として諸外国を訪れたほか、香港やアメリカで短期間暮らしたこともありますが、どの国も公共の場所でのハンディキャップを持った人への配慮は徹底していました。

 

うっかりバスで優先座席に座ると即座に席をあけるようアナウンスが入ります。

 

しかしこれらはルールの問題というより、人々が子供や妊婦さんに対して心から温かい気持ちを持っているのが大きいと感じています。

 

万が一の時に赤ちゃんを守るためのマタニティマークで、逆に危険が高まるような日本社会は一刻も早く改善されてほしいですが、あるママからは、さしあたっての対策としてこんな方法を聞きました。

 

「妊娠初期でおなかは目立たないけれど、無理すると切迫流産などが心配…という場合、”ヘルプマーク”をつけてもいいそうです」(Eさん・30歳・妊娠4ヶ月)

 

ヘルプマークとは、もともと東京都のみで実施されていた制度ですが、現在は全国的に導入され始めています。

 

ヘルプマークの対象は、

義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としている方

と妊娠初期の使用が正式に認められていて、このマークをつけている人には公共交通機関で席を譲る、困っていたら声をかける、災害避難時の支援などが求められます。

 

もっとも、意識がないときに妊娠の有無を知らせるという目的を考えると、バッグの内側などにはマタニティマークも携帯しておく方が安心ですね。

 

おわりに

マタニティマークの利用者アンケートをみると、「マークを見た通りすがりの温かい言葉や親切にうれしい気持ちになりました」という声も数多く寄せられており、実際には「妊婦さんをいたわりたい」「力になりたい」という人もたくさんいます。

 

ただ、特に若い世代では「勇気が出ず、声がかけられなかった」という人もいます。

 

今、小さいお子さんを育てているママ・パパは、少しお子さんが成長したら、ぜひお手本として、弱い立場の人を手助けする姿をたくさんお子さんに見せてあげて下さいね。

 

文/高谷みえこ

参考/マタニティマークについて |厚生労働省 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/maternity_mark.html

ヘルプマーク 東京都福祉保健局   https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shougai/shougai_shisaku/helpmark.html

ピジョン株式会社「マタニティマークをつける理由において、妊婦さんと一般の方の間に認識のズレが約50%存在」 

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000051297.html