エンジニアへの憧れが育つかも?

『はつめいだいすき』

ピップ・ジョーンズ:文 サラ・オギルヴィー:絵 福本友美子:訳

BL出版 1500円(税別)

 

イジーは発明が大好きな女の子。「スパゲッティのぐるぐるまきマシン」や「ひげそりマシン」といったへんてこマシンを日々作ってはいるけど、しょっちゅう失敗してはかんしゃくを起こしています。

 

そんなイジーが、ある日、怪我をしたカラスと出会います。飛べなくなったカラスのために、イジーは何を発明するのでしょう?

 

機械いじりが大好きな女の子、という設定の絵本はあまり多くないのでは? 

 

何度も何度も失敗して、イーッと顔をしかめたり、キーッとかんしゃくを起こしたり、「もうしらない!」と怒り狂って蹴飛ばしたり。それでもおじいちゃんに励まされながら、なんとか心を立て直して、奮闘するイジの姿はとっても等身大でリアル。

 

「なんでもなんどもやってみるんだ」 「やればできる。もっとあたまをつかってごらん」

 

頭を使う。手と足を動かす。失敗してもふてくされない。ふてくされても、またがんばる。イジが学ぶ機械いじりで大事なことは、どれをとっても従来の「女の子らしさ」には当てはまりません。でも、大人に成長していく過程では、とても大事なことですよね。

「女の子らしさ」よりずっと大事なこと

 

今回、紹介した3作に共通するのは、「わたし」が主語だということ。

 

わたしは、お城にいるより冒険の旅に出たい。 わたしは、ピンクじゃなくて黒が好き。 わたしは、料理よりも発明が好き。

 

お城と冒険、ピンクと黒、料理と発明。どちらかが上で、どちらかが下なんてことはありません。双方に豊かな世界があり、どちらを好きになるのも、それぞれの「わたし」の自由。

 

大切なのは、「女の子らしさ」にとらわれずに、「その子らしさ」を伸ばしていくこと。良質な絵本は、そのことに気づく絶好の入り口になってくれるはずです。

 

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文/阿部 花恵