ピンク=女の子の色って決めつけないで
『ピンクがすきってきめないで』
ナタリー・オンス:文 イリヤ・グリーン:絵 ときありえ:訳
講談社 1600円(税別) ※現在は品切れ重版未定
ピンクは女の子のシンボルカラー。女の子ならピンクが好きで当たり前。女の子への贈り物はピンクのものを。
女の子の子育ては、まるでピンクの嵐をかいくぐって前へ進んでいるよう。娘を育てていると、時折そんな風に感じることがあります。
いやいや、そんな言説にからめ取られてなるものか。うちは女の子だからといってピンクを押し付けないぞ。本人が好きな色を選ばせるんだ!と思いつつ子育てをしていたのに、気づけば娘はピンク&プリンセス大好きな女子に成長…。
「なぜ!?」と思いつつも、本人が好きだというものは否定できません。『ピンクがすきってきめないで』(講談社)は、そんなときに出会った一冊。
ふつうの女の子はみんな、ピンクやきらきらのティアラ、フリルのワンピースが好きみたい。でも、「わたし」は、黒が好き。恐竜、虫や、でっかいクレーンが好き!友達の中には人形あそびが好きな男の子や、ミニカーに花の絵を描く男の子がいる。パパやママや大人は、わたしやその子たちを「ちょっとへん」だって言うけど…。
ピンク大好きの娘と初めてこの絵本を読んだとき、娘は目を見開き、「女の子なのにピンクが好きじゃないの?なんで!?」と心底不思議そうにしていました。
自分はピンクが好き、仲良しのお友達もピンクが好き、女の子はピンクが好き。そう信じていた世界に、初めて現れた「黒が好きな女の子」がよほど鮮烈だったのでしょう。それからしばらくは繰り返しこの絵本を気に入って読み返していました。
ピンクが好きな女の子もいれば、黒が好きな女の子もいる。そしてピンクやお花が好きな男の子も当然、いる。性別で「好き」を限定しない。誰かの「好き」を尊重にする。
多様性を知る最初の一歩は、こんなところから始まるのではないでしょうか。主人公の女の子が放つ、強くクールな視線も「女の子らしく」なくて印象的。ピンクに夢中な女子にも、ぜひ読んでほしい一冊です。
ちなみに、筆者の娘はこれを読んだ後も「わたしはピンクがいちばん好き~!」とブレてません。