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毎月、日本テレビの解説委員・岸田雪子さんによる「働くママが知っておきたいこと」をお届けしているこの連載。今月のテーマは「世界遺産」です。

2017年7月に、福岡の「宗像・沖ノ島と関連遺産群」が世界遺産に新たに加わったのは、記憶に新しいですね。

そもそも世界遺産とは、何のために決められるのでしょう。

どのように選ばれ、そしてどう守るべきなのでしょうか。

ユネスコで活躍する日本人、長岡正哲さんに「世界遺産」についてとことんお話をうかがいました。

 


岸田’s Voice
日本でもすっかり身近になった世界遺産。子どもたち世代に残したい「世界の宝」のすてきなお話を聞いてきました。


 

Q.世界遺産って、どうやって決められるの?

A.「世界遺産条約」を締結した国が世界遺産委員会に推薦し専門機関の調査・報告書を経て決定されます

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世界遺産条約は193か国が締結しています。登録には基準があり、「人間の創造的才能を表す傑作である」など10の基準のうち1つに合致することや、その国の保護管理体制がとられていることなどが必要です

 

Q.世界遺産にはどんな種類があるの?

A.「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」の大きく3種類があり、現在1073件ある

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日本には現在、17件の文化遺産と、4件の自然遺産が登録されています。

 

Q.世界遺産は世界のどこに多いの?

A.ヨーロッパやアジアなど歴史ある大陸に多い傾向にあります

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ヨーロッパに次いで世界遺産が多いアジアでは、特に中国が50件と、多く登録されています。

 

Q.日本にはいくつの世界遺産がある?

A.文化遺産と自然遺産が合計で21件登録されています

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日本で最初に世界遺産に登録されたのは、「法隆寺」「姫路城」「屋久島」「白神山地」の4件。24年前のことです。現在は21件が登録され、さらに「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が推薦中です。

 

岸田解説委員おすすめの日本の世界遺産

屋久島/鹿児島県

 

コケに包まれた神秘的な森を歩くと自然のパワーに圧倒されます。

紀伊山地の霊場と参詣道/三重県、奈良県、和歌山県

 

熊野古道の石畳を歩くトレッキングは子どもと一緒に楽しめます。

 

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古都京都・古都奈良の文化財/京都府、奈良県

 

修学旅行でおなじみの京都・奈良ですが子どもと訪れると、また新鮮です。

 

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Q.消失の危機にある世界遺産はどうやって守っていくの?

A.「危機遺産リスト」に登録されて国際社会全体で優先的に守ります

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アフガニスタンのバーミヤンに1000年以上もの昔からあった2体の大仏は、2001年、タリバンによって破壊されました。危機遺産は国際社会全体で守る必要があり、日本も2002年から、修復に約7億円を拠出しています。


用語解説:危機遺産

地震などの自然災害や、紛争、環境破壊などによって危機的な状況にある世界遺産が、世界に54もあります。特に途上国では、世界遺産を守り、継承する人材が不足していて、国際的な支援が必要です。。

 

世界遺産は登録がゴールではない

岸田 今年、国内をにぎわせたニュースのひとつに、福岡県の「宗像・沖ノ島」の世界遺産登録がありました。日本では2013年から5年連続で世界遺産が登録されていて、かなり身近な存在になっていますね。


長岡 日本では登録されましたというトピックスがとり上げられがちなんですが、実は世界遺産は「登録」がゴールではないんです。


岸田 登録されたあとが重要、ということですか?


長岡 そうです。世界遺産の登録によってめざすものは、大きくいうと「世界平和」です。世界遺産登録はあくまでもその入り口にすぎません。


岸田 世界遺産に登録することが、世界の平和につながる、と。


長岡 ええ。われわれユネスコは憲章の前文で、「戦争は人の心の中で生まれるものだから、人の心の中に平和の砦をまずは築かなくてはいけない」と記しています。そのために平和に寄与できる活動には何があるかと考え、生まれた国際条約のひとつが「世界遺産条約」なんです。


岸田 なるほど。世界中で価値を共有して、協力して守ろうとする、それがまさしく、平和を守る活動だということですね。“みんなの宝物なのだからみんなで守ろう”と。


長岡 そのためには対話や互いへの理解を深めていく必要がありますよね。みんながわかり合えたという重なりが、「平和」につながっていくのだと思います。


岸田 世界遺産登録は、世界平和への意思表明でもあるのですね。


長岡 はい。該当国が、「その土地の人たちと一緒に、価値を未来永劫守っていきます」という約束をすることですから。現在、世界遺産条約の加盟国は193か国に上り、国際条約のなかでもおそらく、最も多いんですよ。


岸田 それだけ、その理念が共有されている、ということですよね。長岡さんは現在、アフガニスタンのカブール事務所でバーミヤン遺跡の修復を支援する活動などをされていますが、世界遺産の「維持」の難しさをどんなふうに感じていますか?


長岡 アフガニスタンではまだ、文化財に関する法律やシステムがしっかり整っていないこともあり、そのサポートが大きな役割です。文化財保護や平和の構築って、一日ではできないですよね。その国の人たちが自分で遺産を守っていかなければならないわけですから、自分の足で立てるよう、一緒にお手伝いをしているわけです。


岸田 テロによる破壊や攻撃など、危険と隣り合わせの活動ですよね。


長岡 市内での移動はすべて防弾車です。文化財の破壊は、物理的な攻撃とともに、その国の歴史やアイデンティティをも否定する人権侵害につながるのではないでしょうか。


岸田 イスラム国が、遺跡を破壊して映像を公開するのにも、そうしたアイデンティティ破壊の意味があるのでしょうね。一方、日本ですが、日本では世界遺産に登録されると、観光地としての盛り上がりが大きくて、なかなか世界平和の意識がピンとこないという方もいるかもしれません。


長岡 それもたしかにありますが、ちょっと違う視点で見てみませんか? たとえばサッカーの国際試合で、日本人はゴミ袋を持参しゴミを拾って帰りますよね。あれって、見方を変えると平和活動の一環なんですよ。


岸田 たしかに「日本人のマナーはすばらしい」と称賛されますね。


長岡 日本人は元来、人を思いやり、環境に配慮する本質的な性格をもっています。実は世界遺産条約には、「世界遺産に登録していなくても、ほかに守るべき環境、文化、歴史、建物を大切にしましょう」とも書いてあるんです。この思いを親から子に伝えていくだけで、ほら、もうこれは、世界遺産を守る活動であり、平和のための活動じゃないですか。


岸田 私たちも身近なところで「平和活動」ができるわけですね。


長岡 たとえば近所の公園も、そこで遊ぶ子どもにとっては、なくてはならない宝物ですよね。だから、「落ちている空き缶を拾ってみようよ」と、子どもに伝えることが、世界遺産の保護につながっていくんですよ。


岸田 なるほど! 日常の中に宝物がある、わけですね。本当にそのとおりだと思います。その宝物を見つけて守りつづけることで、心の中に平和が築かれていくんですね。ぜひ子どもたちにも伝えたいと思います。「世界遺産は登録がゴールではない」という言葉も、あらためて身にしみました。


 

●お話をうかがったのは

ユネスコ・カブール事務所
文化部主任
長岡正哲さん

筑波大学大学院で世界遺産学博士号、米国コロンビア大学大学院美術史考古学修士号取得。2004年よりユネスコ勤務。ユネスコ・ジャカルタ事務所文化部主任などを経て現職。

 

【プロフィール】日本テレビ解説委員


岸田雪子さん日本テレビ報道局で記者歴10年を経て、報道キャスターに。『スッキリ‼』、『情報ライブ ミヤネ屋』、BS日テレ『深層NEWS』などに出演し、現在は解説委員として活躍。同じ会社に勤務する夫と、小4の長男の3人家族。仕事、家事、育児に加えて、実母の介護にも奮闘中。日本テレビのママサークル「ママモコモ」でも活動している。

 

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