「薬を飲まずに経過観察」するのも大切な医療行為

 

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どんな薬にも、大なり小なり健康に害を与える副作用が生じる可能性はあります。このため、本当に必要なケースでしか薬を処方しないという医師は少なくありません。 例えば、特に他の症状はないけれど微熱が続いている、軽いのどの痛みがあって不快…こんなときはあえて薬を処方せず、ヒトに元来備わっている免疫力や治癒力で自然に改善していくのを待つという考えです。 また、病院で処方される薬は保険適応となるため、患者さんの負担は抑えられています。必要な費用の多くは医療財源から支払われるため、不必要な薬の処方はNGとされているのが、現在の一般的な方針です。

 

一方で、病院を受診したのに薬の処方もなく「経過観察」とされると、不安に思う方も多いはず。しかし、この「経過観察」も重要な医療行為のひとつです。 経過を見ていくことで自然に治ればそれに越したことはありませんが、良くならないときのみすぐに治療を開始すれば、本当に必要な薬のみを使用することができます。つまり、副作用のリスクを最小限に抑えることが可能なのです。

 

もちろん医師は、なんでもかんでも「経過観察」とするわけではありません。身体所見や検査結果などから、「薬による積極的な治療をしなくても回復する見込みが高い」と考えられるときのみ経過観察と判断します。 「薬も処方されず何もしてくれない」と思うのではなく、「何もする必要がない」状態であるととらえるとよいと思います。