給与ではない働き方の満足度も求められている
──山口さんはサイボウズ勤務歴が長いですね。また、今はマネージャー職に就いていますが、過去と現在で何か違いを感じることはありますか?
山口さん(サイボウズ):
私はフルタイム復帰と同時にマネージャー職に戻ったのですが、時短制度に守られてきたんだなと感じています。時短勤務の頃はプレーヤーとして働くことに集中できましたが、今は打ち合わせもどんどん入るようになり、日中時間が足りないと思うことが増えました。
マネージャーに求められることも変わりましたね。10年前マネージャーに就いていた頃では「どうやってメンバーに成果を出してもらって給与を上げるか」が議論の中心でしたが、今では「給与の上がり幅は少なくても、働き方に余裕があるのでこのままで満足しています」と言う社員もいます。
仕事に対する価値観が変わってきたので、マネジメントするうえでの難しさも感じますね。「働き方」についてフラットに考え、部下や後輩に寄り添っていくことが重要だと感じています。
──サイボウズは多様な働き方を推進されている企業です。今後、働き方をどのように展開していくのかとても気になります。
山口さん(サイボウズ):
開発部門ではタテ型組織を失くしてチームで物事を動かすようになったので、今後は例えばマネージャーが不要となるなど組織の形も変わっていきそうだなと思います。想像もつかない新しい組織になるのではという期待がありますね。
野間さん(サイボウズ):
サイボウズはどんどん変わってきています。複業を行う社員数も増えていますし、複業のためにサイボウズの勤務を減らす社員もいます。人事としては多様性に追い付くための仕組み、さらに効率化するためのシステムは今後も改善していかなくてはと思っています。
今までは個人の支援を充実させてきたのですが、会社という組織なので、チームとしての生産性と個人の働き方の希望を両立する価値観に変えていきたいですね。
山口さん(サイボウズ):
私自身の経験から言うと、後輩たちには「1、2年仕事を休んでも大したことないよ」と伝えたいですね。仕事を休むとブランクが気になる人は多いですが、休んでいる間でも思ったより会社や仕事のやり方は変わらないところもあります。会社を休んでいた間、会社以外のところで別の経験を積んでいるのですから、むしろその休みも意味があると言えます。
去年までは私も10時から17時までの時短勤務で、やりたい仕事でも時間的制約などで諦めなくてはいけない時期もありました。どんなに「私はライフよりワークを重視した働き方をします」と言っていても、子どもが熱を出したら親が病院に連れて行かなければいけないのが現実です。仕事と家庭のバランスを取るとは言っても、突発的なことは必ず起こります。
だからと言って、何もかも諦める必要もないと思っています。たとえ子育て中であってもやりたい仕事があるのなら、その仕事ができるような工夫をした方が建設的です。
そのためには、味方をできるだけたくさん作ること。私もどうしても行きたい出張が入ったら、ママ友に「お土産買ってくるから、お迎えお願い!」と頼んだこともあります。
自分だけでなく、部下や後輩たちがやりたい仕事を諦めずに自分らしく働けるように、「制度」「風土」「ツール」を発展させていきたいですね。 …
「制度」「風土」「ツール」の三本柱で、社員の「働く」を支えているサイボウズ。社員一人一人の「こんなふうに働きたい!」という希望をすくいあげる仕組みと文化によって、多様な働き方を実現させています。
取材・文/秋元沙織 撮影/中野亜沙美 取材協力/サイボウズ株式会社