「育休の目的明確にしろ」 プレッシャーに苦しんだ夫婦も

この日の参加者は専門家や子育て中の親たち、学生など多くの世代にわたりましたが、臨月の大きなお腹で出席した20代の夫婦もいました。
司会の堀さんが出席した理由を尋ねると、夫が育休を取得しようとしたところ、「目的を明確にしろ」と上司に言われて資料を作成することになったり、「現場に迷惑をかけるな」とプレッシャーを受けたりしたと語ったのです。
1か月の育休を取得できることにはなったものの、夫は「復帰後、パイオニアとしてどう行動すればいいか」を悩んでいると話しました。妻も「大企業がこれからどう変わっていけるのか知りたい」と考えて参加したそうです。
小泉さんは「僕はこういう話を聞くと、『退職リスクがある』と感じる。でも、大企業は『社員はやめないもの』と思っているのではないか」と指摘。会場からは驚きとともに、2人を激励する声が上がり、グループワークでも、周囲が夫婦の思いを聞いて話し合っていました。
夫婦は「問題意識を共有できてよかった。悩んでいたけれど、みなさんの意見を聞いて、自分の経験を発信することも一つのやり方なのかもしれないと思えました」と笑顔で会場を後にしました。
少しずつ少しずつ、男性が育休を取得しやすくなっているとは感じますが、まだ取得率は6.16%。理解が進まず、この若い夫婦のように、パイオニアとして大変な思いをしている人は少なくないのでしょう。
このイベントのように、問題意識を持っている人同士で話をしたり、進んでいる企業や国について知ったりすることで、一歩ずつ、育休を取りたい人がためらうことのない、いやな思いをすることのない社会に近づいていくのではないかと感じました。
取材・文・写真/小西和香