小泉さんは、メルカリの男性育休取得率はおよそ85%で、多くが2-3か月取得すると説明。 「優秀な社員をどう確保してパフォーマンスよく働いてもらうか、ということを経営者として考えています。家庭が安定していないと、いくら仕事でチャレンジしろと言ってもチャレンジできません」と、支援に積極的な理由を明かしました。
メルカリでは「マイナスになる部分を徹底的に会社が負担する」という考え方で福利厚生を行っており、育休中も給付金と給与との差額を負担、不妊治療や病児保育にかかった費用も支援しているそうです。
「僕は今39歳ですけど、僕ら世代や下の世代は、ファミリーが一番大切だと思う」と話し、「グーグルなど福利厚生が充実している外資系企業と戦って選ばれる会社にならないといけない」と、企業として子育て関係の福利厚生を充実させることが強みになることを強調しました。
ここで会場の男性から「育休を取りづらい空気の正体って何なんでしょうか」と質問が上がると、小泉さんは「『忖度』でしょうね」とする一方で、「僕は空気っていうのは言い訳じゃないかとも思う」と話しました。
小泉さんは、男性が取得を躊躇する背景には、育休中は育児休業給付金が出るものの100%ではないためお金の不安があること、さらに、職場から離れている間に自分の知らないところで仕事が進み、「浦島太郎状態」になることへの恐れがあるのではないかと指摘。
ことし経営権を取得したサッカーJ1鹿島アントラーズでは基本的に1対1のメールや電話は禁止し、ビジネス向けチャット「スラック」を活用。部署ごとなどに作成したチャンネルでやりとりし、仕事の「見える化」を進めたそうです。
自身も第2子、第3子が誕生した際に2か月ずつ育休を取得。「育休を取れたのは、スラックを読んでおけば会社で何が起こっているか把握できるから。長期出張しているという感覚でいられた」と明かし、「『浦島太郎状態』をケアしなければ、育休取得は進まないのでは」と問題提起。企業がノウハウを共有する必要があるとも指摘しました。
仏は「父親休暇」でお父さんの自覚 子どもとの関係も良好に
イベント後半では、フランス在住のジャーナリスト高崎順子さんが、フランスで2002年から導入されている「父親休暇」について紹介しました。
3日間の「子の誕生に際する有給休暇」と合わせて14日間取得するのが一般的で、取得率は67%だそう。
政府の調査によると、父親休暇は父子の長期的な友好な関係の形成に役立つ上、家事育児分担にも良い影響を与えているそうで、高崎さんは「(父親休暇をきっかけに)お父さんがお父さんになれている、ということが分かります」と説明しました。
雇用者側からも否定的な声はほとんど出ていないと言い、期間を長くすることも検討されているそうです。
このほか毎日新聞の長岡平助記者らが登壇し、国内外の男性育休取得状況について議論しました。
最後に、参加者がグループをつくり、育休にまつわる課題や不安について共有。
「育休は今後のキャリアにも生かせるのではと思っている」「育休中に業務をどう振り分けるか、きちんと対応してくれる上司だとありがたい」「育休を取得した結果、独身社員に負担が行ってしまって分断されてしまうことがある。みんなが納得感を得られるようになればいい」など、活発な意見交換がされていました。
大学4年の男性は「子育てに触れる機会がなくて、子どもが生まれる直前になって考える人がほとんど。子育てやキャリアをどうしていくか、というのをもっと早い時点で考えられるようになるといい」と話していました。