最近疲れやストレスが溜まってきた……と思う際に、「なんだか無性に辛いものが食べたくなる!」なんてことはありませんか?
激辛料理を食べると、なんとなくスッキリする!という方も多いかもしれませんが、よく考えると不思議なことですよね。
ストレスが溜まったときに、激辛料理で解消しようとするのは、実際のところどうなのでしょうか。ストレスと激辛料理の関連性や、注意点などを紹介していきます。
身体が求めているのは、「辛さ」よりも「刺激」なのかも?
人間の心に負荷がかかっている際には、私たちはストレスを溜めがちです。負荷の原因が取り除けない場合には、「今のこのつらさを何とかしたい!」と思う方も多いことでしょう。
なにかつらいことがあったときに、人間には「身体に別の刺激を与えて、つらさから目を背けさせる」という働きが備わっています。つまりストレスを忘れるための刺激として選んでいるのが、激辛料理というわけですね。
辛味というのは、味覚の中でもダントツに強い刺激となります。舌や喉がピリピリと痛み、そちらに必死になっている間は、ストレスについても忘れることができるのではないでしょうか。 何らかのきっかけにより、「激辛料理でストレスがまぎれる」ということを学習すると、強いストレスを感じるたびに「なんだか無性に激辛料理が食べたい!」ということになります。
アドレナリンとエンドルフィン
辛味を感じさせる食材にもさまざまな種類がありますが、特に有名なのが、唐辛子です。この唐辛子を口に入れた際に、脳が分泌するのがアドレナリンです。興奮物質として、知られていますね。
アドレナリンが放出されると、人間の体にはさまざまな変化が現れてきます。発汗が促されたり集中力や運動能力が増したり……「激辛料理を食べると、なぜだか自然にスッキリする!」と語る方が多いのは、このアドレナリンの影響も関連しているのでしょう。
とはいえ、このアドレナリンによる影響は、一時的に身体に無理をさせ、普段以上の力を引き起こしているようなもの。長続きさせればさせるほど、身体への負担は大きくなってしまうはずです。
そこで分泌されるのがエンドルフィンで、こちらはアドレナリンによって覚醒した身体を、沈静化させるための神経伝達物質です。脳内麻薬とも呼ばれることがあるエンドルフィンは、分泌されることで以下のような効果を及ぼします。
- 多幸感
- 恍惚感
- 苦痛を和らげてくれる
人間にハッピーな気持ちを思い出させてくれるのがエンドルフィンであり、激辛料理を食べることで、このエンドルフィンの分泌を促すことができます。
アドレナリンがもたらす高揚感や、エンドルフィンがもたらす幸福感は、ストレスに対処するためのポイントだとも言えるでしょう。心のバランスを整え、健康的な生活を送っていくためにも、「ストレスが溜まったとき=辛いものが食べたくなる」という図式は、ごく自然なものと言えるのかもしれません。
刺激への依存がもたらすもの
ストレスへの対処法として激辛料理を取り入れるのは、比較的手軽な方法だと言えます。とはいえ、非常に手軽な方法だからこそ、注意するべきポイントもあります。その一つが、ずばり依存です。
唐辛子がきっかけとなり、アドレナリンやエンドルフィンが放出されることを覚えると、人間の身体はより強い刺激を求めるようになっていきます。より幸福を実感し、強いストレスに対処するために、どんどん辛味もエスカレートしてしまうわけですね。
激辛料理への依存は、ストレスの根本的な解決に至るものではありません。依存=完全な悪というわけではありませんが、エンドルフィンの刺激に慣れ、どんどんと強い辛味を求めていくことは、やはり問題だと言えるでしょう。
ストレスを抱え、心と身体が疲れているときには、当然身体の内側ある内臓にも、何らかの負担がかかっていると予想されます。それを無視したまま、どんどん刺激物を摂取していたら、内臓を休める時間はほぼ無くなってしまうでしょう。特に胃が疲れているときには、唐辛子による辛味は控えた方が無難です。
普段から激辛料理が好きな方にとっては、「食事=ストレス解消法」と考えることもできるでしょう。とはいえ、ストレス解消の方法をそれだけに頼っていると、さらなる問題を引き起こしてしまう可能性もあります。
依存症にならない程度に、自分自身でうまくコントロールする必要があります。激辛料理以外のストレス解消も身につけ、多角的なアプローチができると良いですね。
まとめ
ストレスが溜まっているときに、つい激辛料理を食べたくなる裏には、その刺激性や脳の働きが関わっているようです。ある意味では、脳の構造に沿った、非常に合理的なストレス解消法であると言えるのかもしれません。
とはいえ辛味による刺激は、体が徐々に慣れていってしまうことでも知られています。同じ辛さではどんどん満足できなくなり、エスカレートしていってしまうことも考えられます。
「辛いものを食べてスッキリしたい!」と思うのも良いですが、「今自分が抱えているストレスを忘れるために、強い刺激を求めている」のであれば、別の方法を選んだ方が効果的かもしれません。辛さを上手に取り入れつつも、それだけに頼らずに済むような仕組みを整え、上手にストレス解消してみてくださいね。
文/小野寺香織