<3.小説「津軽」に登場する喫茶店 駅舎(芦野公園旧駅舎)>

小説「津軽」は1944年の書かれた太宰治の小説です。 主人公である私(津島修治)は、久しぶりに故郷の金木町に帰ることになったのですが、思えば自分の生家とその付近のごくごく狭い地域しか知らないことに気づき、この機会に津軽各地を見て回ることにします。その旅行の中で、家族と縁のある人々と出会ったり、かつて幼少の自分を育ててくれ、生き別れになった子守り役の越野たけと再会したりするというお話です。 津島修治は太宰の本名ですし、実際に津軽のあちこちを執筆のために訪れているので、これは小説ではなく紀行文だとの説もありますが、中に収められているエピソードや人名に関して、事実とは違う部分が確認されているため、やはり小説という色合いが強い作品だと思われます。 この小説の中に登場するのが、旧芦野公園駅であり、太宰はこの駅のことを「踏切り番の小屋くらいの小さい駅」だと書いています。 本当にこぢんまりとしたレトロで小さな駅舎であり、新駅舎へと代替わりしたのち、地元の方が駅舎を利用して喫茶店「ラ・メロス」を経営していましたが、その後閉店。今は津軽鉄道の協力のもと、NPO法人によって喫茶店「駅舎」として営業しています。 当時の駅舎の雰囲気がそのままの店内で、太宰が愛した弘前工手町の珈琲店「万茶ん」のオリジナルコーヒーや、金木特産の馬肉を使った「激馬かなぎカレー」「馬まん(馬肉を使った肉まん)」などを味わってみませんか。

 

<4.太宰が2度宿泊した旅館「旧秋田屋旅館(太宰の宿 ふかうら文学館)」>

旧秋田屋旅館は太宰が津軽の地を訪れた際宿泊した旅館で、現在は改築され、「ふかうら文学館」として公開されています。 館内は、1階は図書館、2階は太宰治が実際に宿泊した部屋を、当時の雰囲気のまま再現した「太宰の間」や、深浦町にゆかりのある文人「大町桂月」「成田千空」の間などがあります。 ちなみに1度目の宿泊は小説「津軽」の執筆時。たまたま泊まった秋田屋の主人が太宰の兄の友人で、思いがけず歓待を受け、アワビのはらわたの塩辛をごちそうになったと書かれています。 2度目は戦争で疎開のため実家に帰省する折、家族を連れて宿泊したそうです。 情緒のある木造の建物で、太宰の件を抜きにしても、一見の価値があります。