「最低でも子どもは7人欲しい」と大家族を望む夫と、3人の育児で限界を迎えていた妻。相容れない思いを抱えるなか、夫が下したのは27歳でのパイプカットという決断でした。そこにあったのは妥協ではなく、妻への揺るぎない想いと覚悟。手術を公表し、SNSで賛否両論を呼んだお笑い芸人・GOGO!HAYATOさんに、決断に至るまでの葛藤と真意を聞きました。
「子どもは3人」「いや7人」夫婦のスレ違い

── 今年9月、27歳でパイプカット手術を受けたことをSNSで公表し、大きな話題となった、お笑いコンビ「流山狂ノ詩」のGOGO!HAYATOさん。現在は6歳、4歳、2歳の3人の娘を育てる父親でもあります。もともとは大の子ども好きで、大家族にも強い憧れがあったそうですね。そんなHAYATOさんが、なぜ27歳でパイプカットという選択にまで踏みきったのでしょうか。
GOGO!HAYATOさん:昔から本当に子どもが好きで、僕自身が10歳のころに妹が生まれたんですけど、それがもう、めちゃくちゃかわいくて。中学、高校の職業体験でも保育園や幼稚園を選んで、子どもに関わる仕事に就こうかと考えたくらいでした。テレビの大家族の番組に憧れ「3人じゃ大家族じゃない。最低でも7人は欲しいな」と、本気で思っていました(笑)。
でも、妻とはかなり温度差があったんです。僕が「子どもはたくさん欲しい」と言うと、「私はそんなにいらない。3人でも多いよ」って。授かり婚だったので、結婚前に子どもの人数まで深く話し合っていたわけでもありませんでした。もちろん、生まれてからは「自分の子はかわいい」と言っていますけどね。
──「最低7人は」と思っていたHAYATOさんが、奥さんの意向に寄り添おうと、気持ちを切り替えるきっかけは何だったのでしょう。
GOGO!HAYATOさん:僕は3人目が生まれたあとも、「4人目、5人目も欲しいな」という気持ちは残っていました。でも、妻は3人目を妊娠した時点で、産むかどうかまで悩んでいたんです。3人目が生まれてからは、僕も家事や育児をしていましたが、3人分の生活費を稼ぐために仕事を掛け持ちし、朝から晩まで働く日が増えました。そのぶん、昼間は妻がひとりで3人を見る時間が長くなっていったんです。妻にもだんだん余裕がなくなり、夫婦げんかも増えていきました。
この時点で妻のなかでは、もう「子どもは3人で終わり」という気持ちが固まっていたんです。体力的にも精神的にも経済的にも、これ以上は難しい。そんな状況を見ていたら、僕も自分の「もっと子どもが欲しい」気持ちを優先するわけにはいかないと思うように。そのころ、妻から「パイプカット(精管を遮断する男性の避妊手術)をしたら?」という話が出たんです。
「もう子どもができない」と悩んだのは2週間
── 奥さんの提案はHAYATOさんにとって、この先、子どもを持つ可能性を自分から閉じる選択でもあります。すんなり受け入れられたのでしょうか。
GOGO!HAYATOさん:いや、最初は嫌でしたよ。手術そのものが怖いというより、もう子どもをつくれなくなることへの抵抗ですね。今は3人で終わりと思っていても、何年か経って「やっぱりもう1人」と思うかもしれない。その可能性まで自分で閉じてしまうことには、やっぱり迷いがありました。
ただ、悩んだのは1、2週間ほど。妻から言われて初めてパイプカットを知ったわけではなくて、僕自身も選択肢のひとつとして以前から考えていました。妻が追い詰められている現実を見たら、自分の「もっと子どもが欲しい」という気持ちだけを優先するわけにはいかないと思っていたからです。
── 子どもはこれ以上つくらないとしても、避妊の方法はいくつもあります。そのなかで、あえてパイプカットを選んだ理由は?
GOGO!HAYATOさん:コンドームでの避妊も100%ではないですよね。一方で、ピルやミレーナは一度で終わるものではなくて、継続して使うのは妻になります。3人の子どもを産み、育児でも負担を抱えてきた妻に避妊まで任せるのは違うんじゃないかと思いました。
だったら、僕が一度手術を受ければいい。妻にこれ以上負担をかけずに、これからも夫婦生活を続けていくために、自分に何ができるかを考えた結果がパイプカットだったんです。
── それほど気持ちは固まっていたのに、実際に手術を受けるまでには約2年かかっています。途中で「やっぱりやめよう」と気持ちが揺れることはありませんでしたか。
GOGO!HAYATOさん:いや、そこはまったく迷っていません。2年かかったのは、お金の問題でした。3人目が生まれたころ、僕は埼玉県のご当地アイドルのマネージャーをしていて、1年間の育休を取ったんです。育休中も手当はありましたけど、給与は下がります。オムツ代や食費など、毎日の生活費だけで家計はカツカツで、そのころは本当に余裕がありませんでした。
手術代は5万5000円ほどでしたけど、当時はその金額をパッと出せる余裕すらなかったんです。だから、少し金銭的に余裕ができてからにしよう、と。その後、マネージャーを辞めて探偵の調査員の仕事を始めて収入が安定したこともあり、「今なら出せる」と思ったタイミングで手術を受けました。
「離婚したら、後悔しないか」なんて考えはない

── パイプカットは、基本的には元に戻すことを前提としない不可逆性のある手術です。27歳でそこまで将来を限定することに、「もし離婚したら」「再婚して別の相手との子どもを望んだら」という迷いはありませんでしたか。
GOGO!HAYATOさん:まったくなかったですね。僕は妻と一生添い遂げるつもりで結婚していますし、妻も同じ気持ちだと思っています。妻との出会いは、僕のひとめぼれ。つき合って半年くらいで結婚しましたけど、子どもが3人生まれた今も、「この人と一生一緒にいる」気持ちは変わっていません。だから、「いつか別の相手との子どもが欲しくなるかもしれない」という将来は考えられなかったんです。
実際に家族を持って、妻が3人の子どもを産み育てる姿を見て、自分の中で何を優先するかが変わったんだと思います。子どもの数を増やすことより、今いる妻と3人の娘との生活を大切にする。そのために選んだパイプカットは、僕にとって「極端な選択」ではなかったんです。
取材・文:西尾英子 写真:GOGO!HAYATO