死は忌むべきものではなく、日々の暮らしと地続きにある

── 哲雄さんが亡くなって10月で14年経ちました。終活について、世の中の動きは変わったと思いますか?

 

金子さん:今と当時とではかなり変わったと思います。一番大きいのは「アドバンス・ケア・プランニング」が全国の病院や高齢者施設で取り組まれるようになったこと。国も「人生会議」という愛称をつけて推進しています。もしものときに備えて、自分が受けたい治療やケアを考えるために、大切にしていることや信念などを共有し、医療従事者やケアマネジャー、家族と話し合っていく取り組みです。夫はこの取り組みが広がる前に亡くなりましたが、今振り返れば、私たちは当時すでに、それを実現できていたのだと思います。

 

── 哲雄さんの死を通して、この先、私たちは何をしておけばいいと思いますか。

 

金子さん:私がお勧めするのは、たとえば何に時間を使ったか、誰と会ったか、誰のことを思っていたかなどを毎日記録することです。1日1日を思い返す時間は、生きることに注力することにつながります。1週間、1か月とまとめて振り返ると、さらに意外な事実や傾向が見えてきて、自分がどんなことを大切にしているのかが浮かび上がってきたりもします。

 

また、家族やパートナー、ほかの大事な人たちに対して、もし何かのわだかまりがあるなら、今のうちに解消しておいたほうがいい。もしその後、自分が何かで亡くなってしまったら、残された人は、「ずっと自分が悪いんじゃないか」と思い続けてしまう。そんな方々にも、実際たくさんお会いしてきたので。

 

亡くなった後の約束もひとつですね。私は死んだ後の待ち合わせ場所を夫と約束しています。迷わないように、「ここで会おう」って。死に近い夫と亡くなった後の未来を語り合うことで、「死で関係が終わるわけではない」と勇気づけられました。

 

── 金子さんのお話を聞いて、死に対しての考え方が変わる人も多そうです。

 

金子さん:私自身、夫が亡くなる前は、死に対して重く、怖いイメージを持っていましたが、今では死ぬことは普通のことだという理解が深まりました。「死は忌むべきものではなく、日々の暮らしと地続きにあるもの。そして、死の前後にある時間は、残された者が前を向き、生きるための引き継ぎにもなり得るもの」と深く実感できるようになったのは、やはり夫のおかげです。

 

取材・文:岡﨑優子 写真:金子稚子