「大輝だけを見ていこう」夫の言葉にハッとして
── 大輝さんは病を抱えているうえに初めてのお子さんで、お世話も大変だったのではないでしょうか。
伴子さん:とにかくオムツ替えが大変でした。どんなに用心していても、突然、大輝が泣き出すんです。びっくりして病院に連れて行くと、太ももにあたる大腿骨にヒビが入っていることが何度もありました。
子育てを経験している友達に「こういう状態で生まれてきたんだけど、どうオムツを替えればいい?」とメールで相談すると、「オムツをしたまま、新しいオムツをその下に置いてから、オムツをそっと外すといいよ」と教えてくれました。試してみたら泣くことがなくなって。あのときは気持ちがすごく軽くなって、友達の存在がありがたかったです。
そんなふうに友達に相談しつつ、手探りでいろいろ試しながら過ごしていました。それでも、つい周りと自分を比べてしまう時期もありました。
── 健常児を育てる母親でも、周りと比べてしまうことは多いです。
伴子さん:そうですよね。私もそうでした。たとえば乳児検診のとき、お母さんたちがかわいい肌着や洋服を着せて、赤ちゃんを縦抱っこをしている姿すらうらやましかったんです。
というのも、大輝が退院してしばらくは、直接肌に触れることが難しく、大学病院でもらった厚手のタオルケットでふんわりと包んで横抱っこするしかありませんでした。また、洋服を着せる時に普通に腕を動かすと骨折してしまうため、母に手伝ってもらって、買ってきた肌着の袖を切り、寝たままで着替えられるように作り替えていました。
そんな日々のなかで、赤ちゃんを縦抱っこしている姿がうらやましくて主人に伝えたんです。
そのとき、私を冷静にしてくれたのが、夫の言葉でした。「よその子と比べるのはやめよう。生まれたときから今までの大輝だけを見ていこう。できていることは絶対に増えているから、大輝だけを見ながら一緒に育てていこうよ」と穏やかに言葉をかけてくれたんです。その言葉にハッとして、後ろ向きになりかけた自分の心をまた前を向けられた気がします。
「いつか絶対できる。そう信じてゆっくり待とう」

── 自分たちの子どもだけを見る、すごく素敵な言葉だなと思いました。
伴子さん:そうですよね。比べるのは生まれてきたころの大輝となんだよなと。答えはシンプルでした。
そういえば、大輝はしっかり成長しているってわかって、すごく嬉しかったことがあって。生まれたとき、この子は両手を上にあげることはできないかもしれないと思っていました。ところがある日、ベビーベッドについているメリーゴーランドの鈴の鳴るおもちゃを振ったり、両手でボールをさわったりして遊んでいたんです。
私ができないかもしれないと思っていたことを、大輝は楽しそうにできるようになっていた。それがすごく嬉しかったし、「この先も大輝なら大丈夫」と思えた瞬間でした。
それ以来、なにか成長を感じたときには、ちょっとしたことでも写真やビデオを撮るのが習慣になりました。見返すとやっぱり「大輝なら大丈夫」と思えますし、明るい大輝の性格が表れていて、いつも私を和ませてくれるんです。
取材・文:たかなしまき 写真:秋山伴子