「もともとは色白のぽっちゃり体型でした」という宮田みゆきさんが、筋トレを始めたのは49歳のとき。厳しかった義母に認めてもらいたい一心でトレーニングに励み、4か月で大変身。ボディビルの大会で見事優勝を果たします。そんな宮田さんが還暦を過ぎた今、老化に向き合いながらも、最後に描く夢とは。

靴下も履けないほどの痛みに耐えて大会に出場

宮田みゆき
年齢による体の変化に向き合いながら、トレーニングを続ける宮田さん

── 宮田さんは49歳のときにボディビルを始めて以来、60歳を過ぎた今も第一線で活躍されています。これまでで大変だったのはどんなことですか。

 

宮田さん:57歳のとき、股関節の手術をしたことですね。トレーニングを始めて3年くらいたったころから、痛みが出るようになりました。私の場合は生まれつきの骨の形状が原因らしいのですが、女性には多い症状のようです。痛みを我慢しながらトレーニングを続けていましたが、立ち上がるのもやっと、歩くのも困難なほどひどくなってしまって。足が上がらないから、靴下も履けないような状態でした。

 

2021年の日本選手権大会に出場したときが、痛みのピークでした。痛み止めの座薬を入れて出場しました。痛みがあって、あまり脚のトレーニングができない中での3位入賞は、ありがたい結果でした。あまりの痛みに、大会後に引退することを考えていました。それまでも手術を勧められていたのですが、手術には抵抗があって。でも、クライアントさんに「いい先生がいる」と紹介していただいて、人工関節を入れる手術を受けることにしました。

 

手術後は思っていたより回復が早くて、入院中に病室でポーズの練習ができたほど(笑)。2024年には競技に復帰して日本マスターズで準優勝。世界選手権への切符を手にすることができました。心身ともに、よく耐えてくれた自分の体に「ありがとう」という気持ちでしたね。今は痛みもまったくないし、人工関節が入っているとは思えないくらい、スムーズに動けます。手術を受けて本当によかったと思っています。

 

── 今も、毎日トレーニングをされているのですか。

 

宮田さん:クライアントさんのパーソナルトレーニングはほぼ毎日していますが、自分のトレーニングは週3回くらいですね。ポージング練習がほとんどです。ストイックなイメージを持たれることが多いのですが、そんなことはないんですよ。私、だらしないんです。昨夜も、お化粧も落とさずソファで寝落ちしちゃいました(笑)。特に今は大会後のオフ期で、今年はもう大会には出ないと決めたので、あまりカロリーなどを考えずに、できるだけ脳にストレスを与えない生活を心がけています。大好きなパン屋さん巡りを楽しんでいて、体重は前回の大会から10kg近くは増えています。

 

でも、そういう生活をずっと続けていたら、自分のことが嫌いになってしまいそうで。「自分を好きになりましょう」とよく言われますが、なかなか難しいですよね。でも、「せめて自分を嫌いにならないようにしよう」と思うと、ハードルが低くなって、体が一歩動く気がします。自分と小さな約束をして、「今日はこれができた」という小さな達成感を得られる習慣を続けていれば、自分を嫌いにならずにいられると思うんです。

 

そのために、大会がない期間もゆるく筋トレを続けていますし、日焼けサロンでタンニング(日焼け)をしています。もともとは色白なほうなのですが、日焼けしているほうが元気でいられる気がして。美白の時代には逆行していますけどね(笑)。

 

── 大会の前は、どのような準備をされるのですか。

 

宮田さん:トレーニングを増やしますし、食事制限もします。炭水化物は控えて、たんぱく質と野菜をたくさん食べるようにします。「筋トレといえばプロテイン」というイメージがありますが、私はプロテインはあまり好きではないので飲みません。たんぱく質は、肉と魚と卵から取ります。

 

私は、自分の気持ちを含めて「ボディメイク」だと思っています。だから「減量」ではなくてあえて「調整」という言葉を使いますし、カロリー計算もしません。ただ体重を減らすのではなく、元気で張りのある体で舞台に立ちたい。そのためには、食事のバランスと心のバランスをどちらも整えたいというのが、私のスタンスですね。

鍛えれば誰でも「シックスパック」に出会える

宮田みゆき
「ベストアーティスティック賞」受賞を目指し、フリーポーズの芸術性を磨いている

── 現在61歳。年齢を重ねて、ご自身の体とはどのように向き合っていらっしゃいますか。

 

宮田さん:「年齢はただの数字」という言葉をよく耳にしますが、私はそうは思えないんです。誰でも確実に老化は進みます。年々、あちこちに痛みが出てきたり、しわやたるみが気になったりしますよね。でも、そういう自分を認めて、「自分を嫌いにならない選択」をしていきたいですし、そのサポートをしたいと思っています。

 

私のクライアントさんには、50代、60代の方も多いです。私もそうでしたが、30代、40代は仕事や子育てに追われて忙しいですよね。自分に時間をかけられる余裕ができてから筋トレを始めても遅くありません。トレーニングを継続することで、70歳、80歳になっても筋肉は増えます。

 

健康維持のための筋トレは何歳になってもできますし、「大会に出る」という目標があれば、さらにモチベーションが高まります。「舞台に上がれるだけで幸せ」とおっしゃっていた方が、大会に出て評価されると、「次はもっとがんばりたい」と新たな目標に向かわれることもあります。

 

筋トレをする人はよく鏡で自分の姿を見ているので「ナルシスト」なんて言われますけれど、見たことのない自分の体に出会えると、宝物を手に入れたような気分になるんですよ。どんな方のお腹にも、「シックスパック」や「エイトパック」はあるんです。ただ、脂肪に覆われていて、なかなか出会えないだけ。鍛えれば、必ず出会えます。

 

── ご自身の次の目標を教えてください。

 

宮田さん:実は、私はまだいちばんの夢を叶えていないんです。デビューのきっかけになった「フィジーク」の日本選手権で、「ベストアーティスティック賞」を取りたい。フリーポーズがいかに芸術性に優れているかを評価される賞で、私はその賞を手に入れて、幕を閉じたいと夢見ています。来年、62歳になりますが、最高の完成度でその夢をかなえたい。自分で納得できる体に仕上げるために、もう一度頑張りたいと思っています。

 

ボディビルは、タイムを競うわけではなくて人が人の見た目を審査する競技です。「人は見た目がすべてではない」と思いつつ、以前の私は、少しでも体に脂肪がつくと自分のことを嫌いになっていました。でも今は、いつか競技をやめて舞台から降りるときがきたら、筋肉が衰えた自分のことも受け入れたいと思っています。自分の体がどんな状態であろうと、自分を嫌いにならないためにはどうすればいいのか。どんな習慣なら、年齢を重ねても無理なく続けていけるのか。自分の老化に向き合いながら、これからも自分の体験をみなさんに伝えていきたいと思っています。

 

取材・文:林優子 写真:宮田みゆき