同世代の妊娠に複雑な気持ちも…自分の人生と向き合って
── 3回の流産はとても心身にこたえると思います。
いとうさん:落ち込みました。その後、結果的に私が52歳のときに妊娠することができましたが、妊娠、出産にたどり着くまでたくさんの感情を抱えました。不妊治療をはじめた頃は希望もあり、そこまでつらいとは思いませんでした。アメリカは不妊治療がすごくシステマティックにできていて、朝7時くらいからクリニックがオープンしていて、仕事前に受診することができましたから。たくさん受精卵を作って保存しておいたので、あとはお腹に戻すだけでしたし、日本ほど急に来院することもないかもしれません。不妊治療で自己注射もしていましたが、治療期間が長くなるにつれ、だんだんルーティンになっていきました。歯磨きをするのと同じ感覚ですね。
でも、時間の経過とともに希望も薄くなってくるんです。とくに自分と同じような年齢の人が妊娠したと聞くと、複雑な気持ちになったこともあります。自分より明らかに若い人の妊娠を聞いても「そうだよな」と思えるんです。でも自分と年齢が近い人の話を聞くと「あの人も妊活をしていたんだ…」と驚き、私のやり方は違うのかと思うこともありました。
── そうした現実と、どう向き合ったのでしょうか。
いとうさん:その都度、夫がそっと抱きしめてくれたり、そばにいてくれたり、支えになってくれたと思います。1回目の流産では夫が胎教CDを持ってきてくれたり、夫の優しさを感じて、不妊治療を通して夫との絆が深まりました。夫が何か助言をするわけでもないですが、いつも寄り添ってくれた安心感は大きかったと思います。
また、自分自身もつらくてもいつまでも悲しみの沼にいることが好きではないんです。沼から出るにはどうしたらいいか。自分はどうしたいのか。どんな人生を歩みたいのかと考えながら、ありとあらゆるチャレンジを続けていたと思います。
もちろん何度も落ち込みました。それでも気分転換に友達と食事に行ったり、仕事に集中したり、自分の心身と向き合いながら過ごせていたのは今考えたらよかったのかな、と思っています。
取材・文:松永怜 写真:いとうゆき