離島のよさに気づけるのは東京の経験があってこそ

── 東京に住んでいた頃は月収が80万円ほどの時期もあったそうですね。お金に対してはどんな考え方を持っていましたか?

 

松岡さん:プロ雀士として収入が上がっていた当時も、生活水準は変えなかったんです。だから、以前から「収入が増えたら生活が豊かになる」という実感はあまりなかったですね。ただ、お金がふえると安心感は確実に増します。貯金できたり、投資できたり。そこは今も変わらないです。

 

── 移住してからお金に対しての考えが変わったことはありますか?

 

松岡さん:昔から、お金を稼ぐことはゲームみたいな感覚なんです。お金持ちになって高級車やブランド物が欲しいという物欲はあまりなくて、「ゲームとしてお金を稼ぎたい」という感じ。

 

でも今は、「無理して稼ごう」「無理して働こう」という気持ちはいっさいなくなりました。自分がやりたいことをして、それでお金を稼げたらいい。マイペースに働きたいと思っています。

 

── 現在は収入が以前の半分以下になったそうですが、支出が減ったぶん、貯金できる金額はそれほど変わらないそうですね。

 

松岡さん:それもあって、今は収入の額よりも「無理をしなくても暮らせること」のほうが自分にとって価値があるのだと思います。

 

── 東京にいた頃と今とでは、「今日はいい1日だった」と感じる基準も変わりましたか?

 

松岡さん:昔は「今日はいい麻雀が打てた」「お店にお客さんがたくさん来てくれた」ということに幸せを感じていました。今は前日の夜に「明日はこれをしよう」とメモして、それが全部できたら「今日はいい1日だったな」と思います。あとは、本当に天気がいいだけで「今日めっちゃいい日だわ」って(笑)。

 

おいしいものを食べて「おいしい、幸せ」と思ったり。東京にいた頃なら、これくらいのことでそんなに幸せとは感じなかっただろうな、という小さなことでも幸せだと思えるようになりました。

 

── そのうえで、「もっとこうしたい」という欲はありますか?

 

松岡さん:ひとり旅は今でもしたいです。もっといろいろなところへ旅行したい。ただ、ペットがたくさんいますし、今はひとり暮らしなので任せられる人がいません。島から旅行するとなると、まず島を出るところから始まるので、なかなか難しいですね。

 

だから、島に来たからといって、何もかも自由になったわけではありません。東京には東京の便利さがあるし、島には島の不便さもある。それでも、今の暮らしは手放したくないと思っています。

 

── もし別の人生で東京暮らしと八丈島暮らしを選ぶとしたら、どちらにしますか?

 

松岡さん:意外かもしれませんが、また東京を選びます。今の島暮らしを楽しいと思えるのは、東京でいろいろな経験をしてきたからという部分がすごく大きいんです。

 

仕事でも人間関係でも、東京だから経験できたことがたくさんありました。今はもう以前のような働き方には戻りたいと思いませんが、一度東京でたくさんの刺激を受けたからこそ、今の暮らしのよさがわかる。

 

だから「東京か島か、どちらが豊かか」というより、両方を経験した今だから、自分に合う暮らしを選べているのだと思います。

 

取材・文:イワイユウ 写真:松岡千晶