プロ雀士として月収80万円を稼ぎながらも超多忙な生活ゆえに「この分野ではもう頑張れない」と東京でのキャリアに見切りをつけた松岡千晶さん。30代での新たな挑戦の地として選んだのは八丈島でした。家計も暮らし方も大きく変わった離島暮らしのなかで実感した、単なる憧れとは違う等身大の価値観の変化とは。

節約ではなく、食材の入手法自体が変わった

松岡千晶
東京に暮らしていたころからずっと一緒にいる愛犬と

── 東京時代は月15万円のマンション住まいだったのが、八丈島に移住した現在の家賃はわずか3万円。数字だけでも大きな変化ですが、実際に移住して最も変わったことは何ですか?

 

松岡さん:ペットとの充実した生活でしょうか。八丈島は家賃が東京の5分の1なのに、家の間取りはかなり広いんです。移住前からペットを飼っていたのですが、犬や猫たちがそれぞれ家の好きな場所で過ごす様子を見ながら「あの子は今日、どこにいるんだろう」って探すのも楽しくて。

 

大きな窓も多いので、日光がよく入ります。日の当たる場所で犬や猫が寝転がって気持ちよさそうに寝ているのを見ると、「引っ越してよかったな」と心から思います。引っ越してからペットも1匹増えました。

 

── 現在は何匹のペットと暮らしているのでしょう?

 

松岡さん:犬が1匹、猫が4匹です。そのうち1匹の猫は八丈島で拾いました。あとは鶏もいます。鶏はもう4歳くらいなので、卵はほとんど産まないんですが、一緒に畑仕事をしていて、雑草や芋虫を食べてくれるんですよ。本当にかわいいです。

 

── 充実した暮らしが伺えます。ちなみに、東京では必要不可欠だと思っていたけれど、島に来て「なくても困らなかった」と気づいたものはありますか?

 

松岡さん:コンビニですね。東京の家は目の前にコンビニがあって、自分の家の冷蔵庫に物を取りに行くくらいの感覚で使っていました。当時は「コンビニがないと無理」と思っていたんです。でも、島ではスーパーが夜8時くらいまでしか開いていません。夜中に「チョコ食べたい」「お酒飲みたい」と思っても買えない。最初は我慢している感覚でしたが、徐々に慣れました。夜中にチョコを食べなければ健康にもいいし、余計なお金も使わなくて済む。「ないならないで、むしろよかった」と思っています。

 

── 買い物そのものが減ったのでしょうか?

 

松岡さん:そうですね。今はスーパーにも月2、3回しか行かないことがあります。釣りをするので、釣った魚と野菜を島の人と物々交換するんです。魚は自分で釣って、野菜をもらって。東京にいたころとは、そもそも食材を手に入れる方法自体が全然違いますね。

島なら生活費がすべて安いわけではない

松岡千晶
八丈島では、釣ったものと野菜を物々交換することもあるそう

── 家賃はかなり安くなりましたが、島なら生活費すべてが安いというわけでもないですよね。

 

松岡さん:そうですね。都心のほうが安くて便利なこともたくさんあります。たとえば外食。東京なら回転寿司も牛丼屋さんもファミレスもあって、安くておいしいものがいくらでもありますよね。

 

八丈島は郷土料理の島寿司など、おいしいものはもちろんありますが、全体的に物価は高いです。2人で飲みに行ったら1万5000円くらいかかることもあります。

 

だから、家での食事がかなり増えました。飲み会も宅飲みが多いです。たまに東京に行くと「おいしい飲食店がたくさんあっていいな」と思いますね。

 

── つまり「地方だから生活費が安い」というより、暮らし方そのものが変わった結果、使うお金が減ったのでしょうか?

 

松岡さん:そうだと思います。買い物に行く回数自体が少ないですし、魚を釣ったり野菜をもらったり育てたり、できることは自分でするようになりました。

 

東京のように、欲しいと思った瞬間にすぐ買える環境ではありません。でも、それに慣れると、コンビニのように「別に必要じゃなかったんだな」と気づくものが結構あります。

 

── 自然のなかでの生活というと、「丁寧な暮らし」のように美化されることもあります。実際に住んでみて大変だったことは?

 

松岡さん:本当に虫は多いです。家の中にゴキブリやアリ、ヤモリも年中います。私はもともと虫がそこまで苦手ではなかったので、今ではゴキブリも手で触れるようになりました(笑)。慣れなんだなと思いますが、苦手な人だと厳しいですよね。

 

── 田舎暮らしでは、ご近所付き合いなど、人間関係の近さを負担に感じるという話も聞きます。

 

松岡さん:そうしたネガティブな印象を感じたことは、あまりないですね。むしろ娘や孫みたいにやさしく接してくれる方が多くて、それを嬉しく感じます。今では私を見つけると「ちーぼー」って声をかけてもらったり、観光の方も気軽に話しかけてくれたりすることがありがたいですね。