「誰が味方で敵かわからなかった」。ひどい裏切りにあい、人間関係を断つために逃げるように屋久島へ移住したフォトグラファー・ヨシダナギさん。当初は身分も明かさず暮らしていたそうですが、東京よりも濃密なご近所付き合いを通して、心境に次第に変化が生まれたそうです。
内覧もせずに屋久島に移住した理由

── 人生に行き詰まりを感じ、訪れたアフリカで現地の方々の写真を撮り始めたところ、29歳でTBSの紀行バラエティ番組『クレイジージャーニー』から出演オファーを受けることになったヨシダさん。放送後はフォトグラファーとしての仕事が殺到し、現在はアフリカをはじめとする少数民族などを撮影、発表しています。住まいはずっと東京だったそうですが、2023年に屋久島に移住されていますよね。どんな経緯だったのでしょうか。
ヨシダさん:もともと知り合いが屋久島に移住していたので遊びにいったんです。現地を訪れると期待以上にいい場所で、初めて東京以外に住んでもいいかなと思えるくらいの衝撃でした。
── どんなところが衝撃でしたか?
ヨシダさん:日本語が通じるアフリカの田舎のような、ちょっと異国のような雰囲気がありました。そのとき出会った人たちは移住者の方が多かったのですが、すごくぜいたくな暮らしをしているなと思ったんです。
食べるものは新鮮だし、時間の使い方にしても、東京ではあり得ないくらいのんびりしていて、「人間の生活って本来これじゃないかな」って。将来、おばあちゃんになったときでもいいから、こんな環境に身を置いて過ごせたらって思ったんです。
── しかし、その年に移住をすることになるんですよね。
ヨシダさん:はい。2月に遊びに行って、同じ年の7月に家を探し、8月に家を契約、11月に引っ越しをしました。実は当時、信じていた人に立て続けに裏切られてしまって。「東京って怖いな」と心底思い、今の人間関係をほとんど断とうと思ったんです。もはや誰がいい人で、誰が悪い人なのかわからなくなっちゃって。
とりあえず、両親とマネージャーにだけ移住することを告げ、屋久島へ逃げるように向かいました。屋久島に行けばなんとかなるって思ったんです。
ただ、移住を決めても屋久島はほとんど物件が出ていないんです。屋久島の町役場を訪ねて移住の相談をしたところ、「1件だけ物件があって、これから情報が掲載されるから、不動産屋に聞いてみてください」と教えてもらいました。すぐに現地の不動産会社に向かったんですけど、「すでに2件申し込みがあるから3番手」と言われてしまって。でも、ダメ元で申し込みして。まだ何も決まっていなかったんですけど、この時点で住んでいた都内のマンションの管理会社には退去する旨を伝えました。それだけ、東京から離れたい気持ちが強かったんです。
しばらくして不動産会社から「1週間以内なら内覧できる」と連絡が来ました。ただそれ以降は次の人に譲ると言われたので、内覧することなく家を決めました。