余命2か月の夫が告げた「俺ら離婚してよかった」の真意

── しかし結婚して3年後に、神代さんの腎臓移植の話が出てきたそうですね。
神代さん:結婚後は透析をしていましたが状態が悪く、医師から腎臓移植を提案されました。迷っていたら晋ちゃんが「俺の使えや」と言ってくれて。2人で話し合ったのち、晋ちゃんから腎臓移植を受けました。
しかし、術後は私の身体が移植の拒絶反応を起こしたり、私の責任ですが、生活習慣の乱れで容態が徐々に悪化。再び人工透析の話が出てきました。
── 生活習慣の乱れとは?
神代さん:結婚前から引きこもりの方を支援する仕事をしていたのですが、稼働する時間帯が夜遅く、帰宅時間は毎晩11時とか深夜0時を回ることがあったんです。昼夜逆転して不規則になり、薬を飲み忘れることもあったし、仕事を頑張りすぎて気持ちに余裕がなかったと思います。
いっぽう晋ちゃんは元自衛隊でかなり規則正しく生活するタイプ。私と結婚したときは工事現場で働いていましたが、毎朝5時に起きて夜10時に寝て、私とはまったく生活リズムが違いました。
そうしたすれ違いが引き金になって、ある日、突然「もう疲れた。別れてくれ」と言われました。自分勝手な行動を顧みて反省しましたが、「妻が透析になろうかというタイミングで離婚を切り出すの?」と思いましたし、すぐには受け入れられませんでした。
でも話し合いのなかで、毎晩帰宅が遅い私に対し「お前が外で何かしとるんじゃないか、救急車の音がするたびにお前じゃないかと思うのがもうしんどい」と気持ちを打ち明けてくれて。私も引きこもり支援の意義を感じていたし、仕事を辞める選択肢がなかったので、離婚することになりました。
── 離婚後に旦那さんと会うことは?
神代さん:当事者の会では顔を合わせ、普通に話もしていました。ただ、離婚してから晋ちゃんの体調が見るからに悪くなって。心配で一緒に病院に行くと、末期の膵臓がんが発覚しました。「このまま治療しなければ、余命は2か月」と言われて、言葉を失いましたね。
その後、晋ちゃんと話をしているときに、晋ちゃんが「俺らは離婚してよかった」って言ったんです。「お前は再び透析をしなきゃいけないし、俺もこれからよくなることは2度とない。互いに痛い、痛いと言いながら相手を思いやれるほど、大人じゃないよ」って。
その言葉で気づいたんです。「酒を辞めて10年経つし、これまでの学びを活かして、人としてできることをまっとうしよう」とまで言ってくれた晋ちゃんが、なぜ急に離婚と言い出したのか。晋ちゃんは腰痛持ちと聞いていたし、結婚前から腰が痛いとも言っていたので、私は特に気にしていなかったのですが、おそらく離婚する前から尋常じゃない痛みを感じ、病気が軽くはないことをわかっていたんですよね。彼の本心に触れた気がして、「こういう愛が形もあるのか」と思いました。
結局、晋ちゃんは離婚した2016年に、59歳で亡くなりました。