人生、すべての仕事が今に繋がった

── 芸人やデザイナー時代から「お客さまをどうやって喜ばせるか」を意識するようになったそうですが、パクチーの販売ではどんな工夫をしましたか。

 

立川さん:当初の主なお客さまは飲食店でしたから「飲食店にとっていちばん使いやすい仕入れ先になる」よう心がけました。たとえば「シェフがすぐ調理できるよう、根はもちろん葉まで洗浄して、向きを揃えて納品する。1キロ単位だけど、要望があれば500グラム単位でも対応」だったり、「1年を通じて切らさない供給体制」にすることだったり。飲食店からしたら、そうした配慮をする仕入先は、とても仕事のしやすいパートナーになるんです。

 

「厨房での使いやすさ」という相手のニーズに刺さる付加価値を最初から提供したことで、ほとんど営業活動をすることなく、飲食店同士の口コミによる紹介で取引先を拡大することができました。

 

パクチーペースト
パクチー加工品として最初に開発したパクチーペースト

── 相手のニーズを先回りして捉える力は、ご主人の死後に長く働かれていた飲食店での経験も大きかったのでしょうか。

 

立川さん:ものすごく大きいですね。いくつかの飲食店を渡り歩き、合計10年近く働きました。とくに最後に長く勤めたイタリアンバルでは、オーナーからかなり厳しいしごきを受ける環境にありました。

 

でも、それをただのつらいだけの苦労話にするつもりはありませんでした。オーナーのそばで、キッチンでの調理作業はもちろん、お金の動き、仕入れの仕組み、お客さまへの向き合い方を学ぶ絶好の機会だと捉えたのです。今思えば、あの経験がなければ農業経営、その後の加工品事業の展開もできていなかったと思います。

 

芸人、デザイナー、飲食店スタッフ、農家…人から見ればバラバラに見える仕事歴かもしれませんが、これまで起きたすべてのできごとが今の仕事に生かされていると私は思っています。

 

取材・文:鷺島鈴香 写真:立川あゆみ