「この精子バンクから選んでください」と

── アメリカにはどれくらい滞在する予定でしたか?

 

沢さん:学生ビザで、2、3年のイメージで行こうと思っていました。旅行ビザだと期間が短いので、現地でアートスクールに通いながら活動しようと思って。病院代や生活費も掛かるから全貯金を用意して、現地でパートナーを探し、結婚、妊娠、出産をセットで考えていました。それでもうまくいかなかったから精子ドナーを使って妊娠して帰国しようと思っていて。

 

── かなりの覚悟ですね。

 

沢さん:人生を賭けました。あとは、日本だとちょっと息苦しかった…というのも正直あります。日本は出産年齢や世間体とか、周りの目が気になりがちですが、アメリカは誰も人のことを気にしないし、自由で開放的な気がしたんです。英語も日常会話程度ならなんとかなりそうだし、このタイミングで行こうと思ったのもあります。

 

── 渡米に関して誰かに相談しましたか?

 

沢さん:唯一、仲のいい友達に話をしましたが、大反対されました。「そんな年齢で子どもを産むつもり?子どもがかわいそう!子育てはそんな甘くない!」とかなり批判を受けて。「私は絶対子どもが欲しいし責任を持って考えてる」と言いましたが、全然伝わりませんでした。でも、彼女が私の人生をサポートしてくれるわけでもないし、人に言われて諦めたくない。結局、友達をひとりなくしましたが、後悔はしていないです。

 

── 信念を貫いたと。先生からアメリカの話を聞いてから、どれくらいで渡米されたんですか?

 

沢さん:1年以内だったと思います。ニューヨークに着いて早々、現地でいちばん妊娠の成功率が高いと評判の不妊治療クリニックに行きました。主治医をはじめ、ナースやファイナンシャルプランナーなどチーム一丸となって、妊娠に対してすごい熱意を感じましたね。診察が始まって早々に、主治医から「46歳だからすぐに体外受精を始めましょう。ここに載っている精子バンクから選んでください」と言われました。精子バンクのサイトには、精子の主の子どものときの写真や人種、身長や出身大学など詳細なデータが書いてあるからそこから選んでと。

 

── 子どもがすぐに欲しいとはいえ、知らない人の精子となると、さらなる覚悟がいりそうです。

 

沢さん:私も「ちょっと待ってください!自分とパートナーの子どもが欲しいので、すぐに相手を見つけて戻ってきます!」と伝えました。先生は「そんなこと気にするの?」といった感じで、アメリカは血縁とかDNAとかほとんど気にしないんですね。その後も「若くて優秀な精子を使ったほうが安心」だと勧めてきました。私も「婚活を頑張って早くパートナーを見つけよう」と気合いが入りましたね。