術後10年経った僕と父について
── 今年で手術から10年経ったそうですが、体調はいかがですか。
クボケンさん:今でも毎月の定期検診と、免疫抑制剤をはじめとした毎日8種類、14錠剤の服薬は欠かせません。移植外科の先生からも、「術後の飲み忘れだけはこちらは関与できないので絶対に守ってほしい」と言われています。
── 食事面では何か制限はありますか。
クボケンさん:グレープフルーツは一生禁止です。免疫抑制剤との相互作用で、検査の数値が正しく読めなくなってしまうそうなんですね。あとは生卵や、新鮮じゃない生ものもNGと言われています。仕事柄、番組の罰ゲームで生卵や謎の混ぜ物を飲まされるような企画もたまにありますが、相方のトモにはそのあたりの事情も伝えているので、現場で代わってもらうなどして、空気を悪くせず切り抜けてくれる体制ができています。
── クボケンさんは腎移植の経験をオープンにされていますが、笑いを提供する職業柄、自身の病気を発信することに迷いはありませんでしたか。
クボケンさん:最初は「言わないほうがいい」と思っていました。空気が重くなるし、楽しい時間を届ける仕事ですから。でもいろいろ考えた結果、公表したところ、SNSなどを通じて「私も移植して術後10年で同じです」「私は2年目」などメッセージをいただいたんです。移植について悩んでいる人がいるなら、人前に出る仕事をしている自分が発信の役割を担うべきなんじゃないか、と改めて思いましたね。
── ご両親との関係に変化はありましたか。
クボケンさん:手術前に比べて手術後の今のほうが、両親との距離がずっと近くなりました。20代の頃は「最近どう?」と親に聞かれても受け流すこともありましたが、今は逆。僕のほうから「お父さんは元気?」「娘を連れて来月遊びに行くね」と実家に連絡することが増えました。
僕に腎臓を提供してくれた父は、80代になった今も変わらず元気でいてくれています。3か月に1回の定期検査もまったく問題なし。移植が原因で父の体に何かあることだけは絶対に嫌なので、そこはいつも気にかけています。
父がどんな気持ちで僕に腎臓を提供してくれたか、娘が生まれて親になった今ならわかります。僕も同じ立場になったら、迷わず提供することを選びますから。
取材・文:阿部花恵 写真:クボケン