「腎移植で4か月間仕事を休む穴埋めじゃないですが、芸人だし、復帰までの動画を撮ろうと、入院当日に病院玄関前でウェイウェイやってたんです」。しかし、クボケンさんはそんな自分を後に恥じることになります。病院に入った彼の目に飛び込んできたのは、待合室で息子の無事を手を合わせて祈る母の姿と、のちに手術台の上で横になるドナー提供者の父の背中でした。

35歳で72歳の父から腎移植を受けて

クボケン
腎臓移植前、手術に向けて入院中のクボケンさん

── 21歳で痛風を発症した後に腎不全と診断。35歳のときに当時72歳だった父から腎臓移植を受けることになったクボケンさんですが、移植に向けての事前検査も大変だったそうですね。

 

クボケンさん:手術日までの4か月、両親が実家の群馬・高崎から東京の病院まで何度も検査に通ってくれました。高齢の父にそこまでさせてしまうのは本当に心苦しかったです。

 

── 入院は1か月、術後の療養は3か月で、仕事はトータル4か月休む予定だったそうですね。

 

クボケンさん:はい。だからその穴埋めじゃないですが、芸人だし、復帰ライブに向けて手術前後の動画を撮っておこうと思ったんです。「入院当日です。頑張ってきまーす!」みたいな。

 

入院当日、朝9時半に病院の前に着いて、ひとりで何テイクか撮影していたんです。「ちょっと暗いかな、もっと笑える感じに」とか、テンションを調整しながら。

 

ところが受付に行ったら、心配した両親がすでに病院に来ていたんです。ドナーの父の入院はまだ1週間くらい先だったので「ひとりで入院するから来なくていい」と伝えていたんですけど。僕に付き添うためだけにわざわざ来てくれて。

 

── ご両親はどんな様子でしたか。

 

クボケンさん:待合室にいた母は、手を合わせて祈っていました。それを見た瞬間「この状況で動画を撮ってるのってなんか違うな」って。芸人だからこの窮地でも何か残せないかと思っていたけど、そうじゃない。さっきまでウェイウェイやって動画を撮影していた自分が急に恥ずかしくなって、撮った動画は全部削除しました。

 

── そこから1週間後、お父さんも入院して、いよいよ手術日を迎えます。手術当日はどんなことが印象に残っていますか?

 

クボケンさん:父が先に手術室に入りましたが、後から手術台の上で背中を向けて横になっている父の姿が、一瞬だけ見えたんですね。僕の隣りにいた先生が、「お父さん、今頑張ってるからね」と話してくれて。あの後ろ姿は…ちょっと今も忘れられません。

 

手術自体はあっという間でした。全身麻酔だったのでハッと目が冷めたら「あれ、5分寝てた?」というくらいの感覚で。下腹部にやや違和感があったのですが、「ここにお父さんの腎臓が入っているよ」と先生が教えてくれました。