ぬいぐるみは大事な「家族の一員」
──「ぬいぐるみのお医者さん」が大事にしているのは利用者の方の「安心」だそうです。この方針には、杉野さんが大切にしているぬいぐるみが大きく関係していると伺いました。
杉野さん:私は30代半ば頃から不妊治療を受けていて、40歳の頃に死産を経験しました。その際、心の支えになったのが、独身時代に夫がプレゼントしてくれたくまのプーさんのぬいぐるみでした。そのぬいぐるみとは不妊治療のあいだも死産になったときもずっと一緒だったので、私のつらさをわかってくれているように感じて。その後は旅行にも一緒に連れて行くような、愛おしい家族の一員になりました。そのぬいぐるみを初めて修理サービスに出したことがあり、離れる寂しさや不安を実感したんです。
お預かりするぬいぐるみはお客さまにとって大事な家族の一員です。自分が家族と離れるつらさを身をもって知っているからこそ、そのつらさをできる限り和らげたいと思っています。
── ご自身に家族同然のぬいぐるみがあるからこそ、サービスを利用する方の気持ちに寄り添えるのですね。
杉野さん:私もそうでしたが、修理に預けると「今はどんな段階なのかな?」「ちゃんときれいになっているのかな」と不安な気持ちになるんです。
そこで、「ぬいぐるみのお医者さん」では独自のチャットを使い、テキストと写真でできるだけ利用者の方と細かなやりとりをするようにしています。患者さんの入院・退院時には写真でお知らせ。治療方針を決める際にも細かくやりとりして行き違いがないようにしています。各治療が終わった段階でも報告して、患者さんがどんなふうになっているのか見ていただいています。
さらに、治療後2週間以内の調整は無料です。チャットではフォルムや表情など、見た目のすり合わせはできるんですが、生地の触り心地や綿の入り具合などは実際に手元に届かないとわからないですよね。我々も治療しながら言葉でお伝えはしますが、感じ方は人によって違いますから。実際に触っていただいて違和感がある場合には調整させていただきます。
── そんなにていねいなフォローがあると、預ける側としても安心です。
杉野さん:「治療して終わり」ではなく、患者さんが自宅へ帰ってお客さまが触ってみて「よかった」と思ってくださってやっと合格なんです。お客さまは不安ななか、費用も時間もかけてうちに預けてくださっているので、その期待に応えたいと思っています。