ぬいぐるみの洗浄や修理を行う専門サービス「ぬいぐるみのお医者さん」では、「ぬい活」の流行に伴い依頼数が急増しています。代表の杉野美紀さんが開業時から大事にしているのは、「お客さまの大事な家族を預かる意識」だそうです。
100体のぬいぐるみで研究し
── ぬいぐるみの洗浄や修理を行う「ぬいぐるみのお医者さん」では、ぬいぐるみを「患者」、クリーニングや補修を「治療」と称して、ぬいぐるみの修理を手がけています。代表の杉野さんが死産を経験した際に心の支えになったぬいぐるみを修理に預けた経験をもとに、利用者が安心して利用できるサービスを作りたいと立ち上げました。
もともと杉野さんはIT業界で働いていたそうですが、まったくジャンルが違うサービスを始めることは大変だったのではないでしょうか。
杉野さん:何から始めていいかわからなかったですね。私の実家は婦人服などの縫製業を営んでいて、幼い頃は手伝いなどしたことがあったものの、私自身は洋裁学校を出ていません。初めは、まったくの素人でした。
そこで、立ち上げを決めてからリユース店でぬいぐるみを100体ほど購入し、洗い方や縫製について1年間じっくり研究しました。それぞれの生地や汚れに合う洗剤や洗い方を試し、生地を傷めないクリーニング方法を追求したり。縫製のことも勉強しつつ、両親に教えてもらって独自に知識を身につけました。

── 100体とはすごいですね。研究に研究を重ね、ようやく開業となったわけですね。
杉野さん:開業当初は依頼がまったくなく、知り合いや友達のツテを頼っていました。インターネットで広告も出していましたが、3か月間はツテ以外の依頼はゼロ。「これはまずい」と思っていたところ、ネットで見てくださったご夫婦から補修の依頼がありました。
患者さんは大切にかわいがられていたシロクマのぬいぐるみでした。撫でられた頭や顔の毛がボロボロになってしまっていて、生地の移植が必要な状態。新しい生地についてお客さまと細かく打ち合わせたものの、表情の補修も必要で、とても緊張したのを覚えています。
治療後に「ボロボロだったうちの子を治してくださってありがとうございました。息子みたいにかわいがっていたので、嬉しいです。これからもかわいがります」とお返事をいただいて。思わず号泣しました。その方からは、数年後にもリピートでご依頼をいただきました。
── リピーターの方も多いんでしょうか?
杉野さん:体感ですが、お客さまの3割くらいの方がリピーターになってくださいます。同じ患者さんが来てくれることもありますし、「今年はきょうだい(別のぬいぐるみ)を連れてきました」と複数で入院してくださることもあります。私たちも、患者さんにまた会えることがとても嬉しいんですよ。