「美しくて息を呑む」ってこのことだなと
── 相撲部屋で育ったアイリさんですが改めて、相撲の素晴らしさはどんなところだと思いますか?
アイリさん:私がいちばん好きなのは立ち会いの瞬間ですね。相撲が他の競技と明確に違うのが、スタートの合図がないこと。立ち合いは相手と呼吸を合わせることで始まります。それが私は「すごく美しいな」といつも思っていて。今から命をかけて戦う相手なのにお互いの呼吸が合わなかったら何度でもやり直しをして、呼吸を合わせてからスタートする。あの瞬間は、国技館がシーンと静まりかえってみんなで空気を作って初めて成立するもので、「美しくて息を呑む」ってこのことだなって思います。
あと、うちの母が初めて会う方によく言っていたのは、「稽古を重ねて強くなっていく姿を応援してあげてください」ということ。育成の段階から成長過程を一緒に辿っていけるのは特別だし、楽しいなと思います。
私自身、相撲部屋の娘ということがアイデンティティになっていると思います。家族の愛情はもちろん、お相撲さんやたくさんの大人に囲まれながら育ってきましたが、相撲部屋の娘だから経験できたこともたくさんあるし、相撲のよさを含め、自分が伝えられることは伝えていきたいなと思います。
取材・文:松永怜 写真:アイリ