夜逃げの翌朝も、何気ない顔で生放送に出た
── その後どうなったんでしょうか。
木村さん:「自分でなんとかしないと」と、誰にも相談しないで抱え込んでいたのですが、ようやく弁護士に相談して、一刻も早く別居をしようということになりました。
見つからないようにAが仕事で不在の日中に荷物を運び出して、夜逃げ同然の形で引っ越しをしました。カーテンも冷蔵庫も何もない狭い部屋に移り住んで、しばらくはシーツをクリップで留めてカーテン代わりにしていました。
冷蔵庫がない生活が切なくて、出社してすぐに冷たい水を飲んだときは涙が出ました。それでも生放送があったので笑顔でテレビには出ていました。
私はいったいどうなるんだろう…。収録で出たお弁当を大事に持ち帰って、何もない部屋でひとりで食べる日が続きました。
── Aはどうなったんですか?
木村さん:別の詐欺事件で逮捕されました。Aの借金の話は誰にも言っていなかったのですが、Aと結婚したこともAの名前も同僚は知っています。ある日、昼のニュースで読む原稿を、同僚が直前に慌てて差し替えてくれたことがあったんです。「何があったんだろう」と差し替えられた原稿を見たら、Aが詐欺で逮捕されたというニュースでした。
逮捕されたという原稿を見て、「この人、木村さんの元夫だ」と気づいた同僚が、私が読むのではなく、同僚が読むように入れ替えてくれました。
Aが逮捕されことで、これ以上隠しきれなくなり、ようやく周囲の人に連帯保証人になっている今の状況を説明しました。それまで本当に誰にも相談できなかったんです。相談してしまえば、現実を突きつけられる気がして怖かった。自分の失敗を認めたくなかったし、認めてしまったら前に進めなくなるような気がして。だから、なんとかひとりで解決しようとしていたんです。
── 改めて、大変な状況でしたね。
木村さん:実際に周囲の人に話したら、同僚をはじめたくさんの方がサポートをしてくださいました。もっと早く、周りの人に相談をすればよかった。頼ればよかったと心から思いました。実際に、Aの悪い噂を知っている方から「大丈夫?」と声をかけられたこともあったんです。でも、「新婚ですから幸せいっぱいですよ!」と強がっていました。本当は不安でいっぱいだったのに。
心を開いて、もっと素直に助けを求めていれば、運命が変わったかもしれないと思いました。
取材・文:大夏えい 写真:木村郁美