食レポでの「決めセリフ」を作らなかった訳

── 長く続けるために、意識していたことはありますか。

 

ラッシャー板前さん:食レポでの決めゼリフはあえて作りませんでした。決めゼリフがあるとおもしろくなるのでしょうが、一度それが受けたら次からそれ以上のインパクトを求められるようになり、毎週の番組でそれをやるのは大変です。逆に、「また同じこと言ってる」って、思われる可能性だってある。だから俺は、飾らず、ムリせず、その場で感じたことをそのまま伝えるほうを選びました。

 

── とはいえ、ただおいしそうに食べるだけではないですよね?

 

ラッシャー板前さん:スタジオの人たち、そして視聴者の皆さんに「うらやましい!」って、思わせることを目指していました。わざと「もったいなくて食べらんない。まだじっくり見ていいですか?」って食べる前にじらしたり、カメラにおいしそうなところをひと口分さしだして、「あーん」って見せびらかしたり(笑)。スタジオの皆さんに「今日も腹立つね~。もうそろそろ締めて」なんて言わせたら成功です(笑)。

 

中継では、撮られ方も意識していましたよ。「今何を撮っているか」を意識するんです。例えば、海鮮丼の食レポで、「完成品を見せる」「最初のひと口を食べる姿を見せる」映像を撮るとします。その段取りがカメラマンと僕とで共有できていないと、海鮮丼を僕が食べる瞬間に、カメラが「別に用意しておいた完成品」を撮ってしまっていたりするわけです。そうすると、いちばん見せたい「最初のひと口」の映像が抜けちゃう。

 

だから、「完成品を別に用意するのはやめてください。僕が全部見せますから」って、ディレクターさんにお願いしました。代わりに、俺が丼の中身をカメラに見せながら「甘エビでしょ、それからイカ、マグロ。あっ、ちょっと変わったのが入ってますね〜。お母さん、これは何ですか?」って食材を全部紹介してから、食べる。そういう段取りをリハーサルでしっかりと打合せするようにしていました。

 

ただおいしそうに食べるだけじゃない。ほかの人の食レポも参考にしながら、「視聴者を悔しがらせる」中継を目指していたんです。

 

── 食レポひとつに、たくさんの工夫を積み重ねる…、その誠実さが現場で長く愛される秘けつだったのですね。

 

取材・文:鷺島鈴香 写真:ラッシャー板前、株式会社TAP