反面教師だった父親からの「親卒」

── どんなきっかけで「親卒」できたと感じられたのでしょうか。

 

UKさん:父からの「親卒」を実感したときです。ここまで父について触れていませんでしたが、僕は子どものころから母にがんじがらめにされるいっぽうで、ずっと父が大嫌いでした。無責任で経済力がない父を反面教師に生きていました。

 

両親の離婚後、父とは長らく会っていなかったのですが、数年前から交流をもつようになったんです。父の家を訪れると、亡き母の写真が飾られていました。「まだママのこと好き?」と聞くと、「当たり前やろ!」と、恥ずかしそうに笑っていましたね。

 

その父が昨年10月に他界したとき、胸が締めつけられるほどの寂しさを感じたんです。「この感情はなんだろう」と考えたとき、父に対する「こんな父親でいてほしい」という大きな期待が、自分を長年苦しめていたんだと気づいて。同時に、自分が父をどんなに大好きだったかがわかりました。

 

── 亡くなってようやく気づけたんですね。

 

UKさん:そうなんです。自分が父親になってからも、父を反面教師に「稼げるいいパパでいなければ」と思い続けてきました。でも、父に対する自分の愛情に気づいてからは、「しんどかった人生に父の生き方を取り入れてみよう」と思えるように。優しくて天然だった父の人柄を意識したら、自分の中の「こうあるべき」が減り、気持ちがラクになって。自分が課した「稼げるパパ」のノルマに到達できなくても、妻や子どもたちは自分を愛してくれていると自信をもてるようになったんです。そのころには、自分は父にも愛されていた、父も大変だったんだと思えるようになりました。

子どもの習い事や進学に親のエゴはないか?

── すてきなお父さんだったのですね。それにしても、ここまでお話を伺って、自分の子育てを反省しました。UKさんのお母さんのように、子どもを自分の思い通りに動かそうとした場面があったかもしれませんし、そういう人は少なくない気がします。

 

UKさん:そうですね。たとえば、子どもに人気のスイミングを習わせたいと思うお母さんってたくさんいると思いますが、そこに自分のエゴがないか、胸に手を当てて聞いてみてほしい。体の丈夫な子になってほしいとか、子どもの幸せを基準に考えるのはいいと思いますが、たとえば「この子をオリンピック選手にしたい」などと自分の希望を押しつけるのは違うと思うんです。これくらいの偏差値の大学に行ってもらわないと、これくらいの知名度の企業に入ってもらわないと。そういう考え方はやめてほしいです。


 
最後まで「ステージママ」だった母との確執を長年引きずってきた僕だからこそ伝えられる思いはあると思うので、今後はそんな場が増えるといいなと。僕が母にされたように、自分の夢を押しつけたり、先回りして道を用意したり、子どもが「自分軸」を失いかねない子育てをしている人は少なくありません。子どもを一人の人間として接し、信じる。そんな関わり方の大切さを伝えていけたらと思っています。

 

取材・文:たかなしまき 写真:UK(楠 雄二朗)