「やった!終わった。もうやり切った」。俳優・田中健さん(75)は、娘の小6から高3まで7年間続けた弁当作りをこう振り返ります。炊飯器もレンジもない家庭で、土鍋でご飯を炊き、焦げる卵焼きに悩み、娘に詰め方を直される日々。思春期の娘の「無言の完食」だけを支えに、名優が辿り着いた「お弁当卒業」の境地。

「寂しい」なんて1ミリも思わない。650回の解放感

── 娘さんの大学合格、おめでとうございます。小学6年生から高校卒業までの7年間続けた娘さんのお弁当作りが終わりましたが、寂しさを感じていますか?

 

田中さん:「やった!終わった。もうやり切った」という達成感こそあれど、「終わって寂しい」なんて、まったく思いません(笑)。

 

田中健さん
包丁さばきもすっかり板についた俳優の田中健さん

7年間を通して、毎朝お弁当を作る世のお母さん方の大変さを改めて実感しました。「今日はごめんね」というわけにはいきませんから、朝起きるのだってプレッシャーでした。

レンジなし、土鍋と蒸し器。妻からの助言には…

── 以前から料理は得意だったのですか?

 

田中さん:いえ。以前はインスタントラーメンくらいしか作れませんでした。それが今や野菜を見ると「どう料理したら美味しいかな」と考えるほどになりました。ただ、うちは妻の意向で炊飯器とレンジがないんです。冷凍食品は蒸し器で蒸し、毎朝、土鍋でご飯を炊きます。水加減が難しかったのですが、慣れたらできるものですね。

 

── 奥さんからはどんなアドバイスを?

 

田中さん:「キッチンを片づけながら作りなさい」と、いまだに注意されます。完成したときはキッチンが綺麗になっている状態が目標。食中毒予防のために、キッチンの衛生面はもちろん、おかずは汁けをきってしっかり冷ますことも徹底してと。僕は「昔、もっと汚いところで食べていても大丈夫だったけどな」って思っちゃうんですけどね(笑)。

 

あとは、盛りつけ。茶色くならないよう、最低3色は入れる。娘の好物・ミニトマトを入れると隙間も埋まってパッと明るくなるので、「これはお弁当のために存在したのか」と思ったくらいです。卵の黄色に、家で育てたハーブの緑が1枚入るだけで、全然、変わりますよ。外食で何気なく添えられていた葉っぱの価値を、この歳で初めて知りました。