「もし寝ている間に倒れたら、誰も気づかない」。かつての破天荒な芸人が、還暦を前に「孤独死」への不安を抱えていました。50歳での離婚を経て、2018年に地元・熊本へUターンした井手らっきょさん。待っていたのは、孤独死への不安と「かつての友がいない」という現実でした。そんななかで見つけたのは、90代の両親とあえて「つかず離れず」で見守り合う日々や、元妻も合流して海水浴へ行く不思議な家族の形。人生の後半戦、今の自分にちょうどいい距離感で他者と結び直す、井手さんの今に迫ります。
再婚への恐怖と孤独死の不安の狭間で
── 50歳で離婚されてから16年、現在は熊本でひとり暮らしです。自由を謳歌されているように見えますが、心細さを感じる瞬間はありますか?
井手さん:夜中にふと「もし寝ている間に倒れたら、誰も気づいてくれないんじゃないか」と、孤独死の不安が頭をよぎる瞬間はあります。ただ、ひとり暮らし自体はもう25年以上になりますから、寂しいというより、もう慣れてしまったという感じなんです。たけし軍団のつまみ枝豆やガダルカナル・タカ夫婦のインスタを見て、「いい歳の重ね方をしているな」と羨ましく思うことも。でも「再婚したいか」と言われたら…。「また失敗したら」という怖さがあるんです。
── 8年前に単身、地元の熊本へUターンされました。人間関係や自身の居場所について、不安はなかったですか?
井手さん:地元の仕事が少しずつ増えてきたのがきっかけで熊本に戻ることになったんですが、地元のつながりといえば高校の同級生くらい。でも、僕らの世代は、みな孫もいる年齢で、気軽に声かけるわけにもいきません。「熊本に帰ってきて、ふだん何をして過ごせばいいんだろう」と、正直、思いましたね。

── その状況から50代で新しいコミュニティをどう築いていったのですか。
井手さん:熊本に戻ってスナックを始めたんですが、今よく遊ぶ友だちは、ほぼ店のお客さん。僕より年下が多いのですが、気の合う人と友人関係になれて、楽しいです。コロナで店を閉めざるをえない時期もありましたが、その間も彼らと連絡を取り合えたおかげで、孤独にならずに済みました。
── スナックという仕事の場が、そのまま人とのつながりを広げてくれる役割も果たしているんですね。
井手さん:そうなんです。昔、川崎でダーツバーを経営していたときも同じでした。芸能界の友達より、お店を通じて知り合った一般の方と親しくなって一緒に遊ぶことのほうが多くて。それがすごく楽しかったので、熊本でも店をやったんですけど、やっぱりそれが大正解でしたね。
もし店を出していなかったら…って考えると怖くなりますね。店に立って他愛もない話をする。それが今の僕の、健康な生活リズムになっています。