たけしさんが頭を下げて回った「打ち上げ」

── その後、たけしさんが熊本までわざわざ駆けつけてくれたそうですね。

 

井手さん:移住して半年経ったころ、「井手を盛り上げに行こうぜ」と、わざわざ熊本で「ビートたけしお笑い単独ライブ」を開催してくれたんです。しかも、当時は大型台風が接近している最中。交通機関はかなり混乱していました。

 

それでも、たけしさんは「どうしても俺は熊本に行かないといけない」と、前日に新幹線で博多に入り、翌日、熊本に。軍団の枝豆(つまみ枝豆)や、若手も一緒に来てくれました。

 

── それだけ井手さんの新しい挑戦を気にかけていらした、ということなのでしょうね。

 

井手さん:さらに驚いたのはライブ後の打ち上げです。その席でたけしさんが「井手を、本当によろしくお願いします」と、地元の関係者一人ひとりに頭を下げて回ってくれて。あとで考えると、熊本の人たちに僕のことを託してくれていたんだと思います。僕がこの土地でやっていくことを、本気で応援してくれていたんでしょうね。人生で一番嬉しかった言葉かもしれません。

 

── 愛弟子の新たな門出を師匠がそこまでして後押ししてくれる。本気で生き直そうとしている人間を一人にしない、最高の師匠ですね。たけし軍団の強い絆と愛情の深さを感じます。

 

井手さん:本当に感激しましたね。東京を離れても、軍団とのつながりがなくなるわけじゃない。誠実にやっていれば、こうして支えてくれる人がいるんだと、そのとき改めて感じました。たけし軍団があったから今の自分がある。東京を離れても、そのことは変わらないと思っているし、常に支えられているのを感じます。

 

 

人生の後半戦。住み慣れた場所や仲間から離れ、一人で新しい環境に身を置くことは、誰にとっても心細いものです。けれど、誠実に歩んだ道の先に、自分の頑張りをそっと見てくれている人が必ずいる。

 

あなたにとって、慣れない環境で立ち止まりそうになったとき、その存在を思い出すだけで背中が温かくなるのは、誰のどんな姿ですか?

 

取材・文:西尾英子 写真:井手らっきょ