酒に借金、女癖が悪くて家にも帰ってこない。半年間の失踪も日常茶飯事──。破天荒な父に振り回された野沢直子さん。自身が親になり「なんてことしてくれたんだ」と怒りが再燃する一方、母や愛人たちが父をいっさい悪く言わなかった不思議な光景が胸に残っています。反面教師であり、人生の指針にもなった父へ、最後は「ありがとう」と感謝できた理由を伺いました。
「半年後にふらっと帰宅」愛人宅を探し回った母の背中

── 亡くなられたお父さんは事業を立ち上げては失敗し、酒にギャンブル、女性に溺れ、職を転々とし、借金を踏み倒して半年間も行方をくらますなど、相当な破天荒ぶりだったそうですね。おかげで家計は厳しかった時期があったと聞いています。
野沢さん:突然、家に帰って来ないことはしょっちゅう。でも、父が愛人宅にいることをたぶん母は知っていて、弟を連れて女性の家を探していたみたいです。私はまだ6年生だったので、「行方不明ならなんで警察に連絡しないんだろう」とドキドキするばかり。「中学の制服が買えるのか」と、心配していました。
でも半年後、父が突然帰ってきたら、母は「お帰りなさい」って普通に迎えるんです。まるで数日間の旅行から戻ったかのような空気で。
── その後、お父さんが事業で成功。生活は一変したそうですね。
野沢さん:中学になると急にセレブ生活になりました。ロールスロイスを乗り回したり、別荘を買ったり。ただその後、母が病気で亡くなったのですが、今度は父が我が家も含め、3か国で同時に家庭を持っていることが発覚(笑)。母の死後半年で再婚し、その後も70代で20代の女性と暮らしたりと…相変わらずの状況でした。
── 野沢さん自身は、30歳で結婚して3人の子どもを育てました。親になったことで父に対する気持ちの変化はありましたか?
野沢さん:むしろ「当時はなんてことしてくれたんだ!」と改めて怒りが湧きました。我が子を置いて家を出ていくなんて、親として信じられません。子どものころも怒りはありましたが、気持ちのぶつけ方がわからなかったし、基本的に父は家にいなかったので、ケンカする時間もなかったんです。そのぶん、当時は母に「ひどい!」と感情をぶつけていました。
ただ、私が40歳のころに、生前の父に一度だけ直接「ひどい父親だった!」とぶちまけました。今まで我慢していた思いがふと溢れたのかな。
── お父さんはなんと?
野沢さん:「俺だって家族旅行に連れて行ったんだ」と怒ってました(笑)。言い分はあったようですが、「ふざけるな!」ですよね。