「夫の心が、限界にきている」。画面越しの表情に、結婚13年目で明らかにいつもと違う雰囲気を察した妻・早穂さん。翌日にはチケットを手に、迷わず子どもを連れてアメリカへ。「家族より大事なものはない」と駆けつけた彼女が見た夫の姿とは。マエケンに寄り添った、知られざる決断の舞台裏を伺いました。

シャンプーの蓋も押せない。肉体の限界よりも怖かった「心の異変」

前田健太 前田早穂
メジャーではワイブスミーティング以外でも家族が参加する機会が多い

── スポーツ選手に怪我のリスクは付き物ですが、前田投手も2021年に肘の手術を経験しています。妻の早穂さんから見て、当時の様子はいかがでしたか?

 

早穂さん:手術の直前は、シャンプーボトルの蓋を押すのも痛そうで…。選手以前に、日常生活にも影響が出ている状態でした。常に痛み止めを飲み、湿布を貼り、ずっと痛みと向き合っていた姿をそばで見ていたので、やはり心配でした。

 

── 手術から復帰まで1年7か月でした。

 

早穂さん:それでもリハビリは前向きに取り組んでいて、気持ちが落ち込むような様子はありませんでした。本当に心配したのは復帰後です。2025年の6月頃だったと思います。

 

── 早穂さんが危機感を覚えた瞬間があったのですね。

 

早穂さん:夫はタイガースの契約を終えた後、メジャーでの生活にひと区切りつけ、日本へ帰国すると決めていました。そのため、私たちは、子どもたちの学校の新年度が始まる4月にひと足先に日本へ帰国しました。アメリカで生まれた息子にとっては初めての日本での暮らし、娘にとっても10年ぶりの帰国。環境の大きな変化に適応していくのは、きっと簡単なことではなかったと思います。

 

ちょうどその頃、夫の状態があまり良くなくて…。テレビ電話で話したときに、「体のどこかが痛いわけではないけれど、思うように投げられない」と打ち明けてくれたんです。

 

これまでも調子が上がらず落ち込むことはありましたが、次の試合に向けて気持ちを切り替え、私の冗談に笑ってくれるような余裕がありました。けれどその時期はそうした冗談が言えない空気で…。前向きになれず、眠りも浅いと話していて、画面越しでも心身ともにとても苦しい状況にいることが伝わってきました。長く夫を見てきましたが、ここまで強い不安を感じたのは初めてだったかもしれません。