自分だけでなく投手全体を見据えた提案を受け
2025年6月16日、大谷選手は投手として復帰。8月には勝利投手として、160キロを連発して完全復活を証明しました。
「今後1回でもトミージョン手術が必要になる状態になったら『自分は投手として終わる』と大谷選手が言っていたので。復活は嬉しかったですね」
開発チームが報われた瞬間でしたが、直後の打ち合わせで大谷選手から驚くべき提案を受けます。

「ケガのリスクを軽減できるのではないか、と提案を受けたんです。自分のことだけでなく、故障のリスクと戦うすべての投手に目を向けているように感じました」
球速の向上とともに増大する肘の負担。その危機感を感じているからこその提案でした。
「プロ野球やメジャーリーガーにおける、投手の肘のケガは近年増えています。その理由は体が弱くなったからではなく、球速の出力があがっているから。身体により負荷が増大し、故障につながる可能性も高くなります。大谷選手も現場でそれを肌で感じているからこその提案だったと思います」
大谷選手の熱い思いを受け、プロのプレーヤー限定ですが、昨年末に商品化が実現したのです。開催中のWBCで、打者に専念する大谷選手に対して、清家さんは技術者としての本望を次のように吐露します。
「WBCだけでなく、その先のシーズンもあり、1年間を通していかにパフォーマンスを発揮できるか、『CW-X Arm Brace』が少しでも貢献できれば本望です。WBCの試合中もサポーターをつけるようなので、試合で装着する姿が見られるのは個人的にも楽しみです」
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規格外のパワーで「試作品を破壊」しながらも、それを技術者への感謝に変え、さらには球界全体の未来のためにと商品化を望んだ大谷選手。
日本の職人技と、ひとりの天才の執念が結実したこの「守護神」の物語に、何を感じましたか?世界一を目指すWBC、そしてその先のシーズンを戦う彼の右腕に、みなさんはどのような期待を寄せますか。
取材・文:西村智宏 写真:株式会社ワコール