ラジオでも「白スーツとひげ」が必須。十字架を受け入れた先

── そのイメージチェンジも、長くは続かなかったのですね。

 

ムーディ勝山さん:白いスーツとひげを捨てた僕には、まったく需要がないと思い知らされました。白いスーツとひげではない僕は、周囲にもまったく気づいてもらえなかったんです。

 

さらに、あるラジオ番組が決まったとき、局長から「衣装は白いスーツ、ひげもつけて」と言われました。姿が見えないラジオでも、ロケがあります。周囲に僕だとわかってもらうには、それらが必要だということです。別の番組に出演する際には、楽屋につけひげが置いてあって…。「ああ、自分はこのキャラからは逃れられないんだな」とがく然としました。まるで十字架を背負ってしまったかのような感覚でした。

 

ポップアップショップには連日たくさんの人が詰めかけた

── 大ブレイクして知名度が上がったからこそ、そのイメージから抜け出せなくなるとは。ジレンマだったと思います。

 

ムーディ勝山さん:でも、逃げるのをやめて10年、15年と続けていくと、ネタがワインのように熟成されてくるんです。自分を一発屋だと清々しく認められるようになると、肩の荷が下りてくるんですね。あの怖かった沈黙を楽しめる「タメ」が戻ってきました。この流れを経て、一度は飽きられたネタが新たな輝きを放つんですね。

 

10年経つと、視聴者の方も年齢を重ねてきます。すると、久しぶりに僕を見て「懐かしいな」と、思ってくださるんですよ。さらにブレイク時を知らない世代の方にも知ってもらえるようになります。古くから知ってくださっている方、新しいファンの方と、再びブレイクしたネタが広がっていく実感があります。

 

今は、「ひとつのネタしか当てられなかった」というネガティブな思いはありません。むしろ「一発でもホームランを当てられたのがすごい」と僕自身も周囲も前向きに受け止めているように感じます。僕にとって何物にも代えがたい財産です。これからも、この白いスーツを大切に、「右から左へ受け流し」ながら、一生懸命取り組んでいきたいですね。

 

 

流行から20年。かつて「十字架」だと思った白いスーツを、今は「かけがえのない財産」と語るムーディ勝山さん。あなたには、一度は捨てようと思ったけれど、結局、離れられなかった「自分の代名詞」のようなものはありますか?

 

取材・文:齋田多恵 写真:ムーディ勝山