「父を知らない私」が、12歳の息子と手をつなぐ理由
── 現在、2人のお子さんのパパとして大切にしていることはありますか?
ムーディ勝山さん:自分に父親の記憶がないからこそ、家族と過ごす時間はかけがえのないものです。子どもたちと一緒にいると、とても心が満たされます。かつては「芸人のパパ」を恥ずかしがるかも…と不安はありました。
でも、妻がまったくこだわりがない人で。小さいときから「パパがテレビに出ているよ!」と明るく番組を見せてくれたんです。おかげで、家族で僕の仕事を応援してくれています。子どもたちがテレビを観て喜んでくれる姿を見ると、やっぱりうれしいですね。

── お子さんたちとの絆も深いようですね。
ムーディ勝山さん:長男は12歳、長女は9歳になりました。驚くのは、思春期に差しかかった息子が、今でも外出中に手をつなごうとしてくることです。ふつうなら親離れする時期のはずなので、嬉しさ半分、「まだ離れないの?」と、とまどい半分でもあります。でも、僕がほしかった「父親との時間」を彼も求めてくれているのかもと思うと、温かい気持ちになります。
2025年、ある企業CMのイメージキャラクターも務めさせていただきました。渋谷駅の構内や山手線の車内に僕の写真が貼り出された際も、家族全員で見に行って写真を撮りました。僕のなかで空白だった「父親」という存在を、今、子どもたちと一緒に作り直している感覚です。受け流すことのできないこの家族の時間を、これからも大切にしていきたいですね。
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35年というあまりに長い空白を経て訪れた、父との再会と突然の別れ。ムーディ勝山さんが亡き父のために用意した「もうひとつのグラス」には、言葉にできない複雑な想いが込められていました。
人生には、どうしても「右から左へ受け流す」ことのできない瞬間があります。もしあなたが、疎遠になっていた家族の最期に向き合うことになったら、どんな言葉をかけ、どんな「親孝行」をしたいと思いますか?
取材・文:齋田多恵 写真:ムーディ勝山