「障害者」になれない、グレーゾーンの孤独

── 素晴らしい成功を収めたいっぽうで、日本での生活では「制度の壁」に直面していると伺いました。

 

吉野さん:そうなんです。私のように「片目だけ失明」している人は、現在の日本の制度では障害者認定が受けられません。公的な援助はいっさいなく、ヘルプマークをつけていても、パッと見ではわからない障害のため無視されることもあります。

 

──「多様性」と言われるいっぽうで、取り残されている感覚があると。

 

吉野さん:むしろ、どんどん生きづらくなっているように感じます。特別に助けてほしいわけではなく、ただ「グレーゾーンの不自由さ」を知ってほしい。世界大会で2位になっても、日本に帰れば制度の狭間で孤独を感じる。私が発信を続けるのは、自分自身が影響力を持ち、この「見えない障害」にスポットライトを当てたいからです。

 

── 右目が見えるうちに、やりたいことは?

 

吉野さん:有名ブランドの服を着て、もう一度パリコレに出ること。そして、私と同じような境遇の人たちが「自分もできる」と思えるような先駆者であり続けることです。不自由さを抱えたまま、私はどこまで行けるか。その姿を、誰かに見ていてほしいですね。

 

 

パリコレという世界の頂点で「多様性」が称賛されるいっぽうで、一歩ステージを降りれば、日本では「障害者」とすら認められない現実があります。制度の狭間で「グレーゾーン」の生きづらさを抱える人たち。彼女の歩みを知った今、これからの日本に、どのような眼差しが必要だと思いますか?

 

取材・文:酒井明子 写真:吉野奈美佳