高齢者の運転ミスによる痛ましい死亡事故などがニュースから流れてくると、「免許返納」の問題がクローズアップされる昨今。Mr.マリックさんにハンドルを置く決意をさせたのは孫からの予期せぬひと言でした。いざ車のない生活を始めたところ、そこには超魔術でも解決できない「高齢者の移動」という切実な課題を実感したそうです。
孫からの痛烈なひと言でハンドルを置く決意を
── 平成初期に超魔術ブームを巻き起こし、日本マジック界の重鎮として知られるMr.マリックさんが運転免許を返納されたのは、70歳のとき。きっかけは、お孫さんのひと言だったそうですね。
Mr.マリックさん:孫がまだ小さいころ、運転する車の後部座席に乗せていたときのことです。当時乗っていたのは左ハンドルの車だったので、私の視界では路肩の電柱が実際より早く、近くに迫ってくるように感じて。ぶつからないよう無意識にセンターライン側に寄って走っていたら、孫から「じいじ、危ない。まっすぐ走ってないよ」と言われたんです。
自分では安全運転のつもりでしたが、その後、妻からも同じ指摘をされ、「運転していいのかな」と、だんだんモヤモヤして。そのうち孫が私の運転を怖がって、車に乗るのを嫌がるようになったんです。ただ、そのときはまだ返納までは考えていませんでした。
── そこから一転して、免許返納を決断されました。何が背中を押したのでしょう。
Mr.マリックさん:その後、免許の更新時に試験場で、高齢者の免許返納を呼びかけるポスターがたまたま目に入ったんです。その瞬間、孫に言われた言葉をふと思い出して。
警察の方が列に並んでいた私に気づいて声をかけてくださったので、免許返納のことを相談してみたんです。免許証がないと身分証明をするときに困るかなと思うこともあって悩んでいると。そのときに「運転経歴証明書」という、免許を自主返納した人が身分証明書代わりに使えるものがあると教えてもらったんです。それなら困らないし「もういい時期かもしれないな」と思って、その場で返納することを決めました。

── 免許更新のために試験場を訪れたのに、自主返納して帰ってきたわけですね。ただ、70歳での返納は、少し早い決断にも感じますが…。
Mr.マリックさん:車の進化についていけないと感じたこともきっかけのひとつでした。私たちの時代は鍵を差し込んでエンジンをかけるのが当たり前だったけれど、今はボタンひとつでしょう?ハイブリッド車なんてどうやって動かせばいいのか、とまどってしまう。同じ車といっても、もう別物。車の進化についていけず、運転の操作も難しいと感じました。